マーコール

音楽と小説が好き

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最近の記事

北の国から

 いつもの街の、いつもの通り道に、ぽつりとドアが佇んでいる。街の景色は変わらず、道路も空もビルの連なりも、見通せる限り続いている。それでも、そのドアをくぐって進めば何処か遠くの、此処とは違う場所に繋がっていそうな気がして、緊張と興奮を同じくらい抱えてノブを回す。  ドアの向こうには、いつもの街と、いつもの通り道。  わかってはいたとも。今更非日常が向こうからやってこないことに腹を立てるような真似はしない。けれど、ゆるゆるとしたやるせなさをその日は覚えて過ごすことになる。

    • あるいはナイフだった何かについて

       あまりうまくいってるようには見えないけど、性自認や恋愛などについて、色々な幸せの形があるのだということはだいぶ言われるようになって久しい。一方で、「○○歳にもなって異性経験のない人はどこか破綻しているのだ」といった論調も減ることなく目にするし、例えば空想の人物に思いを寄せる人々を揶揄する行為もネット上なんかではしっかり続いている。  さて、朝井リョウ「正欲」はもう読まれただろうか。私はといえば、およそ一か月ほど前に読んでから、内容について言及した文章を出力することができな

      • 盛れるアングル

         急ぎのタスクがなんとか片付き、春休みに突入した。久しぶりにそれなりの文章を書く必要があったのと、少し前からそれとはまったく無関係に紙のノートで作文の練習をしており、文章作成のモチベーションが高まっている。三日坊主で途切れていたこっちのnoteのことを思い出したので、今日はこちらに。  意外と自分に興味がなかったのかもしれない。色々あって、一週間以上自分の歩いてきた道のり、思考体系、価値観について考え続けていた。これほど長い間自分のことばかりあれこれ思案するのは初めてだった

        • 晩夏に響いた狂詩曲

           8/24、日本武道館で不可解参(狂)を見てから今日に至るまで、本当に体の底から余熱に浮かされていて、「ライブよかったな……」以外考えられなくなっていた。ようやく意識が武道館から帰ってきたので、ライブを通してもらった感情を言語化しておこうと思う。基本備忘録的なスタンスで綴っていくが、もしこれがあなたの思い出や、言葉にできず靄のかかった感情の具体化に役立ったなら、それは望外のことだ。 セトリ順にざっくりと  まずはこれについて語らねば始まらないだろう。一曲目に堂々と披露され

          波、空間 言葉は淡く広がる

          はじめに  逸木裕さんの「電気じかけのクジラは歌う」を読んだので感想やそこから派生した思考を書き残しておこうと思う。こういう作品は覚えている範囲ではじめて読んだかも。 AIの文化芸術への展開  ちょっと前までAIが人間の仕事を奪うとか2045年問題とかけっこう話題になってた記憶があるのだけど最近はあんまり聞かない。ブームが去ったのか、私が思っているより昔のテーマなのか、コロナ禍で人同士の面と向かったやりとりが制限されたことで、日常の大半の場面でにおいて、そこに人がいよう

          波、空間 言葉は淡く広がる

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          動機  これを書くにあたってはじめに記しておくべきはこれであろう。いくつかある。 ・アウトプットの練習 ・文章作成の練習 ・感想の掃き溜めとしての利用  一つずつ、少しばかり詳しく掘っていく。といっても、人に見られることは期待していないので、個人的な備忘録の意味合いがほとんどを占める、煩雑な文章になることが予想される。 アウトプットの練習  コロナによって集団生活とは隔絶されて久しいが、それに加えて学年を追うごとに取るべき単位数も減っていき、サークルも感染拡大防止のための