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読書とピクニック



わが町の図書館は木曜日だけが 夜の七時まで開館している

できるだけ沢山の本を読みたい、できるだけ長く図書館にいたい

この町の図書館は閉館時間が早い点は残念なのだけれど
いつ行っても空いていて 大きな吹き抜けのある素敵な図書館なのである

週末はだいたい 彼と図書館で過ごす
そして できるだけ沢山の時間を図書館で過ごしたい二人なので
彼は有給を木曜日に取ることが多い


そんな感じで昨日も彼と図書館へ行った

大きな鞄には水筒とバスケット ピクニックシートも入っている
水筒には熱いお茶がたっぷりと満たされている

図書館までの道のりを読んだ本の話やしりとりをしながら歩く

ふわふわと小さなものが足元から風に舞いあがっていく
彼がケサランパサランかな、とその行方を見つめた

ふわふわの小さなものがまた現れた
もしかしたら たんぽぽの綿毛かもしれない さっきのよりは小さなふわふわだった

図書館へ続く小さな小道で 彼がこの道を歩くと
こないだ私が話したひつじのことを思い出すんだ、と言った

それは 吉田篤弘の『中庭のオレンジ』に出てくるひつじのお話だ
物語はとても楽しかったので 是非手に取ってみてほしい


おなかが空くと 図書館の前にある森へ行く
公園という程の遊具は少ない、ベンチが幾つかある小さな森

そこでピクニックシートを広げておにぎりやサンドイッチを頬張る

木漏れ日がやわらかなオレンジ色で森を包んでいる
足元には小さな松ぼっくり カサカサつもった木の小枝


二人の本の世界とは きっと二人が手にとって読んだ本の物語だけでなく


散歩道のケサランパサランかケサランパサランではないふわふわ
私が彼に話し、彼が間接的に想い描くシリアルナンバーのあるひつじ

突然の雷雨、線路の踏切のカタカタ
窓辺からじっとこちらの様子を伺っている青い瞳をもつ白い猫

そういう すべてなんだと思う

そして それは本の世界ではく 
二人がいる二人が見ている世界なのでもある



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