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追い詰められた話 2

一人の警察官が戻って来た
一階は何も変わった様子はないようだった
「二階も確認させてもらいます」
もう一人はトイレや洗面所・風呂場を
確認しに行っているようだ

警察って大変な仕事だな
もしかしたら他人の “万一の姿” が天井から
ぶら下がっている可能性だってあるのに
恐怖を押し殺して間取りも分からない
暗い部屋を確認するんだから

やがて出てきた警官二人
誰もおらず何も異常はなかったという

どうやら母は内側からチェーンをかけて
裏口から出ていったと思われる

と、そこへ仕事帰りの息子が通りかかった
「ばぁばならすごい勢いで出てったよ」

は?出ていった?どーゆーコト??
しかも “すごい勢い” って何!?

息子が言うには
仕事前にばぁちゃんの様子を見に来たら
じいちゃんの小さい遺影と
霊璽-れいじ-(仏教でいう位牌)を
   ※我が家は神道
鞄に詰め込んで『暫く帰らない!』と
飛び出して行くところだったという

息子も仕事の時間があり、そんな母を
引き留めて話を聞く事が出来なかったらしい

とりあえず隣県の母の実家に電話して
叔父に事情を話しそちらへ行っていないかと
確認したが来ていないという

じゃあどこへ?
時間はもうすぐ0時を回る
母はやっぱり戻ってこない

警察署へ行って捜索願を出すことにした
正式に手続きしておけば全国に情報が回り
似たような背格好の人が見つかった時に
連絡が入るとの事だった

母が戻ってきた時の事を考えて
妹に母の家に残ってもらい
息子と二人警察署へ出向く

手続き途中で聞いた話によると
今回のように命の危険の可能性が
ある場合に限り一度だけ携帯電話会社に
協力依頼して使用履歴を追跡し
大まかな場所を特定出来るとの事だった

当時母が使っていたのは折り畳み式ガラケー
早速追跡してもらうと
やはり母の実家近くで反応が出た

隣県の警察に連絡してもらい
地元をパトロールしてもらったが
母らしき人の姿は見当たらないという

時間は刻々と過ぎていく
私も妹も一睡もできぬまま夜が明けた

▶3へ続く





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