ずっと深く深淵はお前を覗いて(アルバム異空-IZORA-感想)

そう言うわけで感想である(ツッコミは不在)
大体Twitterで直感的に呟いたものの再編集とかそんな感じである。
モーメント無くなっちゃったからさぁ(´・ω・`)
サードアプリは使えなくなって自分の発言もただ消えていくのみで追うのも難しいのが現状だし。
自分の発言なんて自分でまとめておいて何になる?とも思うが、意外と追えなければ追えなければ寂しい所もあるのだ。
だって自分くらいしか自分の文なんて興味ないし。
そして心も頭も周囲も自分もあとは忘却のみなので。
攻殻機動隊のようにまでいかないが外部記憶に頼るのもまた良いのではと。
例によって曲によっては分量の偏りが激しい。
また歌詞に於ける直接的表現に関して述べた先の文にも目を通して頂けるとありがたい。

01 QUANTUM Ⅰ

一般的に分量や量子を指す。
また、

コンピュータにおけるスレッド(プロセス)の切り替えの一つの基準であるタイムスライスの中で、各スレッドに割り当てられる一定時間のことをいう。タイムスライスとも言う。

Wikipediaより抜粋

と言う意味もあるらしい。
アルバムのプロモで散々使われたので最早馴染すら出来ている。
あれ、前からライブ前のSEとかに使われてませんでした?みたいな錯覚すらある。
今井さんこう言うの好きだよね、と言う直球の感想。
若干バイオハザード的なものも感じさせる辺りもまた。
不穏さが心地よい、ツアーでの映像演出が今から気になる。平沢進のインタラクティブライブみたいになるのだろうか。
或いはアナーキー辺りのOPもそんな感じがあった気がする。
\call HIRASAWA/(違)

02 SCARECROW

全曲視聴トレーラー公開時と印象は少し異なり、静かな立ち上がりからの疾走していく畳みかけが心地良い。
ギター音とベースが醸し出すアダルトでありながらどこか青臭さが残るような音の構成がとても好み。多分わざとなんだろうなぁ。
今回のアルバムは総じてベースがごりごりに利いていてとても格好良い。
ベッタベタな男性口語調の歌詞も櫻井敦司なら表現の味になる。
他がやったら割と大事故である。
あっちゃん、そしてBUCK-TICK結構そう言う所ある。
彼らだから絶妙のバランスで格好良く成立してるけど、他がやったらホント大事故やぞ(´・ω・`)ってのは多い。
インストからの一曲目として、このバンド、総じてこのアルバムを聴く心構えが出来る感じがある。
だから一番初めが正解なんだろうなぁと個人的に思う。

03 ワルキューレの騎行

ワーグナーかと思ったらクトゥルフでござった。
歌詞のどえらい場末感と曲の重厚で且つ荘厳さがアンバランスでとても良い。本当にベースが良いんだまた。
直球で好きだし、聴いていく内にまたどんどん惹き込まれるスルメ曲。
ダークホースであった。
ある種世界観がバラバラなのである。荒んでいるのは確かだが場末であるようでまた違い、そして現実が生々しいようでどこか世界がずれている。
そして全てのズレが一曲で合致する。
直球で他者を罵倒し自己を正当化する歌詞は割と久々な気がしてしまって(してるだけなのだが)少し驚く。
試聴の段階で一瞬これは今井さんの曲だっけ、と思う部分もあったのだが、全体通して聞いたらごりごりに今井さんの曲だった。
イントロで圧倒し心をがっつり掴んでいくのは如何にも今井さんらしいし、Cメロのクラシックのような厚みある重々しさは不穏さを際立たせ、流石だと思う。

深淵から覗いているのは、誰だ。
覗いた先にあったものは、何だ。
連れて行くのは、微笑んでいるのは本当に自分にとっての戦乙女か。連れていかれるのは、本当にヴァルハラか。
夜が、明ける。
目の前のお前は、誰だ。

嘘で、構わない。嘘で、良いのだ。

そう言えばワルキューレが連れて行くヴァルハラでは戦士の魂=エインヒャルは、来たるラグナロクに備え毎日戦って死に、夕方に生き返り饗宴に興じ、そしてまた朝になると殺し合うと言う。

終わらない、永遠に。

そして晩の饗宴で戦士に酒の酌をするのもまたワルキューレ。

それこそ一種軽薄さもあるSCARECROWからの重厚な畳み掛けは意図的なのだろうと感じてる。
このアルバム、順番が凄く重要。

04 さよならシェルター

まず順番が反則である。ここで入れて来た意味がある、そんな感じがする。そして出だしからもう反則であり、全てが反則な歌である。
この一曲に関しては記事が一つ成立するくらいに自分はクソデカ感情を持っている。
曲の芯を残しながらもヴァイオリンによるシンフォニックで荘厳な雰囲気が加わった。もう反則なのだ。
そしてそれは、一種どうしようもない世界への悲哀さも際立たせたのだ。反則以外なんだと言うのだ。

直接的に反戦や政治的問題を訴える唄は苦手、と言うのが個人的にあるのだが(前の投稿参照)この唄に関しては自分の受け取り方や曲(作曲は星野英彦氏)も相俟って苦手であれど特別に感じている部分は強くあった。
目の前にあるのは絶望だけど根底にあるのは希望を感じさせる。そんな曲調。
歌詞は暗示ではなく明確な意志を持って提示されている。
今現在も戦争の続く国で、シェルターで歌う少女がモチーフ。
これ以上になくモデルも明かされている。
はっきり言ってしまえば苦手な部類に入る、心酔する星野英彦の曲だからと言っても苦手なものは苦手である。
だけどこの唄は、悲壮感を感じさせない曲調とどこか救いを感じさせるのも相俟って自分の中では好きだと思う曲。

雨は止まない、誰かを殺し誰かが殺しに来る、狂ってる。
音も色も無く、狂ってる外の世界。
それでも、迎えに行く。君を狂ったこの世界から守るシェルターに。

それでも、世界は綺麗だと、歌う。
そして、君を連れていく。地獄のような、だけど綺麗なこの世界へ。

原曲の絶望と明確な戦争を想起させる歌詞に反して多幸感すら感じさせるメロディが好きで、だけど、このアルバム版のアレンジはイントロの時点でもう涙腺が緩む感動がある。
自分のちっぽけな好みなど関係なく、真正面からぶちのめす、圧倒的な正論
個人的に原曲が凄く好き、だけどそれとこれとは別。このアレンジは素晴らしい。ある意味そんなアレンジされたら素晴らしくなるに決まってるだろうと思う位、腹が立つ位の優れた、圧倒的に正しいアレンジ。
そう、正しさで殴られた気分である。
だから、自分の中ではこのアルバムでのこの唄全てが反則なのである。

しかもインタビュー見たら最初からバイオリンの構想があったのだと言うのだからこっちが正しい(35周年アルバムに収録された方が間違いと言う意味では決してない)んじゃねぇか、と。
つまり原曲はこっちだった訳だ。なんだよもう。
アレンジじゃねぇじゃん(´・ω・`)
このアルバム版の「正解感」が凄くて、だけど初出のが好きすぎて無茶苦茶悔しい(面倒くせぇファン)

05 愛のハレム

星野英彦の持ち味の一つである妖艶な世界観の構築美をまざまざと見せつけられた曲。
これはまじでアルバムで全容が分かってから化けた。
星野英彦が作る曲に櫻井敦司が歌詞を乗せて出来上がった世界が如何に強いかが分かる曲の一つ。
今回も例に漏れず世界観の作り込みが徹底されているように思う。
系譜としては前作ABRACADABRAの月の砂漠に連なるとは思うが、やたら生々しさや現実感が際立つアルバムの中では珍しい位に幻想色が強い。紗に包まれたような音と櫻井敦司の声が幽玄さを醸し出している。
そこにあるのはまさしく、幻の都。
タナトス、楽園など過去の歌を想起させる歌詞もファンには嬉しい。

英さんの曲は結構櫻井敦司の声の出しやすさを考えた創りになってるように個人的には感じている。
結果それは伸びやかさに繋がり、曲そのものが最大限に魅力的に昇華されるような。
反して今井さんはその辺りあっちゃんの限界値を超えるものを出して叩きあげて造っていくイメージが強い。
今回も例に漏れず、この一曲は非常に伸びやかにあっちゃんの魅力的な部分を引き出し表現したものになっていると感じている。
ライブでの表現が今から楽しみである。
それはとても妖艶で退廃的、蠱惑的で美しいものとなりそうだ。デカダンスこそ櫻井敦司の真骨頂である。

割と今回のアルバムは荒んだ現状や心証を内的な具現化のように表現している唄が多いと感じている為、小難しく考えなくて良い、提示された世界に素直に浸れる曲なので個人的にはとても助かるのよ、次が次なだけに。

06 Campanella 花束を君に

試聴の段階で「はいトラウマ確定(´・ω・`)」と感じていた。
実際聞いたら10割増しでトラウマになった。
どこか悲哀を感じさせながらも底抜けとも言える位に明るい曲調に戦争を想起させる直球の歌詞。
最早分かり易くホラーである。
分かり易いからこそ10割増しで空恐ろしい。
そこに明示されたイメージは明確で疑いようもなく、私自身が苦手とする「直球の政治的背景が見える歌」である。答えが一つしか無い。
ただ、その一つしか無い答えに至る世界の背景はまた想像によって代わってくるかも知れないと思う曲。
故に怖い。裏が怖いお伽噺のように思える。
明確に提示されているからこそ、実は自分が簡単に思い浮かべたその背景は間違いで別の意味があるのか?疑いたくもなる。

子供たち、子供たち…子供たち?子供たち。

曲調としては今井さんの非常に得意とするものだと感じる。
少しレトロさを感じさせちょっと寂しくて、耳に残りやすく、またこの歌詞でこの曲で、そら苦手だろうが何だろうが脳内を廻る。延々と廻る。
なんちゅうもんを造ってくれたんや(´・ω・`)
色んな意味でトラウマソングである。

07 THE FALLING DOWN

BUCK-TICKファン的に今井寿と櫻井敦司のツインボーカルに間違いはなし。
イントロから言ってもう今井節全開だし今井さんのボーカルが聞こえて来た時点で最早それは約束された勝利である。
ライブで盛り上がる事必至である。そして今井さんはしんどいであろう。頑張ってくれあなたが選んだ道だ。
イントロからずんどこずんどことファンの好きな所を突いてくる直球の心地よさがある一曲。
ダウナーながら爽快感も強く、だがこのアルバムに相応しいヘヴィナンバー。
這い上がれキマイラと言いながらとことん堕ちていくのだ。
果たして底はいったいどこだろうか。

落下のキマイラ、堕落のエンジェル、逆撫、怠惰サカシマ
これでもかと言う程今井さん節である。分かりやすく好き。
そして逆撫を魚で、だと思っていた。游ぐ魚かと。

08 太陽とイカロス

ファンの皆様の感想を見せて頂いていた中に「THE FALLING DOWNの後に太陽とイカロスなんだ…」と言うのを見て自分も改めて驚いた。
この唄は先行シングルとして発売されたもので、作曲者は星野英彦。

少し、驚いた。

ファン目線を除いたとしても彼は素晴らしいメロディメーカーで荘厳なバラードを得意としてはいるが、実は作曲の幅はとても広い。
ヘヴィでダークなものから静謐さを感じさせるもの、妖艶でエロティックなもの、そして時々突飛な癖強飛び道具を出してくる。
長年ファンやってる身ですら「はい???(´・ω・`)」となる事も多い。なんだよサバイバルダンスってダンス天国って。
ただ総じて良い曲なので困る。まーライブでも盛り上がる盛り上がる。楽しい。そして本人も楽しそうである。嬉しい。

そんな英さんの曲の中でもまた一つ、違うテイストの曲を出してきたな、と感じたので。
この曲に関して一つ長文記事が出来る。なので大幅は割愛。
イントロで圧倒し心をがっつり掴むのが上手いのは今井さんだけじゃない。
よく今井さんはその異質な存在感と才能から天才だ鬼才だと称賛されるが、忘れてはいけないのはその横に35年並び立っているのはこの星野英彦なのである。
本人達何一つそう言うの気にしてなさそうだが。
ただ個人的に英さんが本気で怒ったら一番びびるのは今井さんであろうとずっと思っている(何)

BUCK-TICKの関係性はある意味特殊で、全員平等に見えて実は先輩後輩兄弟と言う絶妙なパワーバランスの元に成り立ってると感じてる。
高校の先輩後輩、そしてその兄と言う関係性は未だに変わらず、だからこそのバランスの元に成り立ってると。
この辺りは別の話なので以下省略。
ただ、端から見れば独断専行で前を進む今井さんだが、自身が一番他4人がいなければ成り立たないのを知っている気がする。
ギター弾くの大変になるしな
上手い人なら頑張れば一人でこなせるギターパートを二人で分けてる時点でな…ニコイチなのよ。
それは英さんにとっても同じだとは思う。
特典でMVの個別アングルとかあるけど、おーいギタリストー手数、手数よー、となる事は否めない。
勿論敢えて分担している事で個々のパフォーマンスが上がっていると言うのも事実なので(フォロー)

追記:ツアー始まったらワルキューレで最早弾く事すら放棄状態の英彦が見れました。貴重。
そしてまたそれがちょい悪と言うか…悪い英彦降臨、でわたくし別の意味で震えました()
格好良い(語彙喪失)
あの人優しさ自然体で間違いなく穏やかで良い人なんだろうけど、そんな人がステージでガラ悪ーい感じ演出するの、堪らなく格好いいんだよな…。

話盛大にズレた(´・ω・`)

そして前に記した記事での通り、印象が途中で変わった曲でもあるので。
翼も機体も自分はまた別の想像をしていたのだけど。
だけど、哀しいけどこれで自由だと。
ああ、そうなんだなぁと思う。明確な答え。そうなって来ると大分イメージも当初とは変わって来る。
この曲にこの歌詞を乗せたのかぁと思うし、そうなると自分はやはりSOFT BALLETESCAPEと結びついてしまう。
哀しくはない、これで自由なのだ。涙はぼろぼろと零れていくけれど。だけど。

曲調だけで言うなら非常にキャッチーでとっつきやすさもある、疾走感、多幸感、そして終末感、少しの寂しさ、開放感。そんな言葉があがってくる。
自分の好きなアーティスト個人が齢50代後半にして新しい境地をみせてくれた曲。
愛のハレムと記述がダブるが星野英彦が作る曲に櫻井敦司が歌詞を乗せて出来上がった世界が如何に強いかが分かる一曲の一つ。
星野英彦に関してはその人そのものが自分の好きの象徴と塊なので、クソデカ感情が暴走した文章しか記せなくなるのが困る。

08 Boogie Woogie

こう来るか、とも思うしこう来るよね、とも思う一曲。
若い頃に中古のハイエースにバクチク(敢えて片仮名)号と名付けてツアー廻ってたと言う逸話があるのは有名だけど、やっぱりその辺りが元なんだなぁと。
それが青春回顧ソングにならない所もBUCK-TICKらしく良い。
そしてこの曲、聴いた後は急に脳内にスライドしてくるのである。
これもBUCK-TICKあるあるだと思ってる。
個人的にはこのアルバムの中では初期視聴時は弱かった。ワルキューレやThe Falling Downの強さに隠れる。
だがふとした時にあれ?この曲初めに聴いた時よりいいな、好きだな、となって脳内LOOPし出すのである。
スルメ曲ともまた違う、ホントBUCK-TICKあるある。

09 無限LOOP

こちらも先行でシングル発売された曲である。
今井寿と言う人を写真で見て見ると、仏頂面のどっからどう見てもオジサンであると思う。なんなら新規の人にはギターおじいちゃんとか言われてて笑った。皺も増えたしねぇ。
だがあの人は天使なんである。
おいおいファン目線にしたってそりゃないんじゃない?と思われるかもしれないが、そうじゃない、あの人は天使のようにやたら純粋で可愛い可憐な部分を持ち合わせたオジサンなのだ。
何を言ってるか分からないと思うだろう、自分でも分からん。
説明が難しいのだ。

ただ今井寿の魅力に少しでも気付いてしまったらあの仏頂面のオジサンは天使に様変わりするのである。

確かに若い頃はホント妙に天使のような赤ちゃんを想起させるような、ごりごりに欲求もあるがっつり男性的な人なのに変な所が純粋でまるで処女のような初心さを感じさせる、不思議と可愛いお顔をされていた。
そして困ったことに、大分老けた今も印象はそのままなのだ。
いつまでも可愛い人なのだ、今井寿は。
今井さんを可愛いと思えた人
はもう「こちら側の人間」なのである。
ようこそお魚の沼へ。ハレルヤ。

なんなら垣間見える人格は割と独善的で我侭で自分がやりたいと思った事は通す我の強さを感じさせる。そして往々にしてそういった人に有るトラブルメーカー気質でもある。
だけど許せてしまう。何故なら今井寿だから。
そう言う魅力を持つ人なのだ、今井寿は。なんと得でずるい人であろうか。
そしてそれだけの才能も持ち合わせている。
と言うか才能とパーソナルで色々と許されてる部分はデカいぞ今井寿。
絶妙な世間と流行との整合バランス感覚を持ち、その上で自分の作りたいものを生み出せる、そしてそれが実現できるだけの仲間を持っている。
この辺りはもう語りつくしたらキリがないのでいい加減止めるが、無限LOOPはそんな今井さんの可愛い部分が詰まっている。
ロマンチストなのだ。凄く。
私は永遠の恋愛童貞(言い方ァ!)と呼んでいるが、いつまでもそんなロマンチックな心を持っていちゃう、可愛い人が作ったロマンチックが詰まった曲なのだ。
歌詞を見ると不穏なのもまたご愛敬。
果たしてどこを何をLOOPしているのか。

そしてインタビューで本人曰く今まで無かった感じのを造ってみたと言う一曲。
英さんの時にも感じたが簡単に言うけど50代後半でそれが出来るって…と思う。恐ろしい子。

11 野良猫ブルー

猫と言えば櫻井敦司。
そして分かりやすく櫻井敦司が好きそうだ、と言う直球の曲。
Boogie Woogieと同じく、ある種ベッタベタなベタな一曲である。
35年やってるバンドだからこそ許される感もある。
多分ライブで見たら印象が変わりそう。

12 ヒズミ

今アルバムのトラウマ曲その2
こっちも実際聞いたら10割増しだった(´・ω・`)
なんちゅうものを作った櫻井敦司よ。

そしてご本人が凄く気に入っていると言うのが手に取るように分かる一曲。
作詞家本人より明確に女性の心を持つ男性を演じているような一曲、と言う提示もなされている。
うまくいかない、こんなはずじゃなかった、なんでこうなるの?どうして?そんな各々が持つどうしようも出来ない歪がエレジーとなって容赦なく浴びせられる。救いが全くない。
自分じゃどうしようもない、そんなやるせなさが詰まってる。

個人的にワルキューレの騎行で「なんで??私ばっかり??あいつらが悪い」と言った口で「こんなはずじゃ、優しくなりたい」と歌うの凄いよなぁと思う。単純に。

12 名も無きわたし

この曲は、私の救い。
詳しくは前の記事後半にて。

ありがとう、愛を、陽だまりのような日々を、名も無き私に、ありがとう。

曲としてはこちらが原曲、スタンダートなのだと強く感じさせる。(アレンジ版が先行シングル太陽とイカロスのC/Wとして収録されていた)
アジアを思わせる音や曲調が心地よく、春の日を、花を感じさせる。
そして花はいつか散るのだからと言う暗示も、だけど、だからこそ、今は今だけは、と言う願いを「こちら側の私達」が乗せたくなる一曲。
本人達も異空に於ける象徴的な曲だと言っているが、個人的にそれが嬉しい。

13 QUANTUM Ⅱ

冒頭のQUANTUM Ⅰと対を成すインストゥメンタル。
今井さんが終わりをしっかり〆る形で対で作りたかったと言う通り、終焉へのいざないを感じさせる。
また名も無きわたしから聴くととても心地よい。
そして不穏さからはワルキューレの騎行の歌詞に使われた「深淵を覗く時また深淵からも覗かれている」と言うのを思い出す。
元ネタはニーチェなのだが、自分としてはクトゥルフをまず連想する。今井さん好きそうだし。

異空(総括)

全体を通して思うのは、救いはないんですか(´・ω・`)と思う生々しい現実感。
妙に現実的なのだ。痛みも悪態も、汚辱に塗れたこの世界への唾棄のような剥き出しの嫌悪感と諦念。
これを追記してる時点でメンバーの35周年記念インタビューの後半が公開されており、アルバムについても語られていたので最初に記したよりは感想も変質しているのだが、なんと言うか根底にあるのは「どうしようもない現状への怒り」があるように思う。
自分の力ではどうしようもない事象に対する怒りや、変えられないやるせなさ。ジレンマ。そう言った怒りが今までにない以上に込められているように感じた。
少なくとも櫻井氏からそう言った感情を感じたのは間違いじゃないだろう。
だからこそ直球でぶつけてきた、そう言う感じに思えて来た。

またインタビューにて感じられた「今の自分達を見て欲しい」と言う点からもそう思えてくる。
彼らは「今の自分達」を曲に、作品としてアルバムに込めている。
だからこそこんな時代だからこその剝き出しのジレンマややるせなさ、どうしようもなさに感じる怒りを自分も感じ取っているのかも知れない。

BUCK-TICKと言えば自分がいつも感じるのは現在進行形である。
ファンは一様に言うのだ、最新作がいつも一番格好良いと。
故にそのアルバム毎に、驚く程の変化や多様性を感じ取って来た。
進行していかねば変化と言うものは現れない。進んでいるからこそ、変わっていくことが出来る。
同じように分類できるものはあるが、同じではない。
その時々の「今」をこれでもかと込めているのがアルバムと言う形なら、確かに今回のアルバムはこういった形に収まるのだろう。
特にインタビュー後半を見て、なんとなく自分はそう思えた。

今回のアルバム、前に記した記事の通り自分はOne Life One Deathの系譜を感じている。
One~One~はヘヴィ且つメロディアスなナンバーが多く、自分の中では暫くこのアルバムがバンドの最高峰となるだろうと思ってた。割と早くに十三階は月光やらmemento moriやらが出て来てあっさり更新されたけどな、最高峰。
そもそもSIX/NINEと言う名盤があるので異論は凄くあると思うが、これは個人的な位置づけなので。実の所セールスで言うならそこまで上位ではないし、One~One~。いや毎度オリコン20位以内に入ってるって凄いんだけど。
そしてSIX/NINEの系譜言うとRAZZLE DAZZLEABRACADABRAと言ったアルバムに位置付けられると思ってる。
バラエティに富んでいてその分まとまりには欠けるが癖の強い曲も多く、とにかく中毒性が高い。
One~One~の系譜は世界観がある種分かりやすく、まとまりが良い所があると思う。或いはアナーキー、アトム未来派No.9、No.0辺りはやはりここに位置付けられるように感じてる。
ダークでヘヴィな音で構成されるメロディアスな世界観は彼らの得意とする分野である。
故にその分、多少まとまり過ぎている感はある。
今回のアルバム異空もある意味癖も強いし毒もたっぷりだが、やはり、何と言うか、棘が少し足りない。
前出がABRACADABRAってごった煮アルバムだったのでこれはホント仕方ない部分はあるが。
そう言うアルバムはツアーで完成する傾向が強い。
過去の癖強ソングが良いスパイスになって世界観が補強されるのだ。前述の或いはアナーキーからのアルバムもそうだが、天使のリボルバーなんかは本当にツアーで完成した感が強い。
個人的に歴代の中でも少し弱さを感じたアルバムだったので余計に。

そう、ツアーはどうなるんやと。
このままでは英さん曰く暗黒ライブ(微笑)再来である。いやそれも良いんですが、それも凄く魅力的ですが!自分としてはユリイカくらいの未来に向かう推進力を感じる救いはちょ、ちょっと欲しい…かな…。

続くコロナ禍の中だったからこそ、この曲の引っ張って貰えるような推進力に凄く、凄く救われたので。

ただ、アルバムのツアーはそれこそ世界観の体現なので。音源で感じた世界観をステージでどう視覚的に見せてくれるのかが愉しみでもあるので。
まあ暗黒ライブでも良い…そう言う世界観のアルバムだもの。
ただlong distance callとかゲルニカとか禁じられた遊びとかの過去曲ぶっ込まれたら私の情緒は墓場直行である。
あ、アンコール辺りでちょっとアガる過去曲があれば嬉しい…かな…。

まあどんなライブになろうが、自分は満足してしまうんだが(盲目)
35年の、自分にとっては25年の安心感。
そりゃ25年の間には「ん???」と思う時期も多々あった。ついていけないかも知れん…と思う事もあった。腹の立つ事もあった。
だけどついてきてしまった、ここまで。
だから安心がある。今回のツアーもまた、新しい世界が見れるんじゃないかと言う期待と安心感。
多分それがなくなった時は自分にとっての終わりであり、彼らにとっても終わりの時なんじゃないかなと。
前に向かって只管走って来たのは彼ら自身なのだから。一番自分達が分かっている事だろうと。

今公開されている35周年記念インタビューに於いてもこの異空についてはメンバーそれぞれの解説がされているが、異なる空の他に異なる空気である可能性もヤガミ氏によって示唆されている。
一人別の名前で完全にBUCK-TICKとしての別パーソナルを確立させて参加している、年上の彼らしいと思う。
ある種俯瞰し、少し離れて見ている感がある。
関係性が家族(実際に実弟がいる訳だがそこはまた別にして)然として来ているバンドの中では必要なポジションであると個人的に思っている。

異なる空気、それこそ今井が目指す所なんじゃないかとヤガミ氏は言う。
それこそ異空そのものもメンバー5人それぞれ見ているそれはまた別なのかもしれない。
今井さんは只管に異なる空気を目指し、櫻井氏はその先の異なる空を見上げているのかも知れない。
同じもの目指して作りだして、だけどその先に見えるものはまた少しずつ異なっているのかもしれない。

だから私自身が曲一つ一つにメンバーが目指したものと違うものが見えるのも、また答えの一つとして許されるのではないかと思っている。
つらつらと論ったが、総括すると自分としてはとても好きなアルバムと言うシンプルな答えです。

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