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臨床での外出・旅行リハビリテーション:お散歩ツアー編

こんにちは。私は作業療法士で、2011年に免許を取得して以来、現在は訪問看護ステーションで勤務しながら、個人事業主としても活動をしています。常に好奇心を持ち、新たな挑戦を楽しむことを大切にしています。

今回は、作業療法士となって5年目の私が、外出リハビリテーションとして企画した「お散歩ツアー」についての記事です。

外出リハビリに取り組むきっかけとなったのは、救命救急センターで作業療法士として働いた経験からでした。この職場では、深刻な症状を持つ患者さんが多く、彼らが専門的な治療を受けることができる病院に転院されるまでの期間、私がリハビリを担当していました。しかし、多くの患者さんが将来に対する失望感を抱えているのを目の当たりにしました。

例えば、全身火傷を負った患者さんがいました。この重度の火傷により、皮膚が動かなくなり、関節が固まることを防ぐために、私はその方の体を動かすリハビリを行いました。患者さんは歩けるようになりましたが、リハビリ室への誘いに対し、「部屋から出たくない。こんな全身包帯でミイラのような姿を人に見られたくない。もう外に出ることは諦めた」と仰られました。

40代半ばの女性は、仕事中に起きた悲惨な事故で手をミキサーに巻き込まれ、切断することになりました。彼女は、防衛大学に進学する成長期の息子さんのために、これからも食事を作り続けたいという強い願いを持っていました。しかし、片手を失ったことで、その願いを諦めざるを得ないという絶望感に苛まれていました。

19歳の少年がバイク事故で全身の骨折と腕の神経損傷を負うという大きな事故に遭いました。ある日、彼の病室を訪れた際、いつも楽しみにしていた週刊少年ジャンプが見当たらないことに気づきました。少年はベッド上安静で自分で買いに行くことができず、増え続ける医療費の中で雑誌を買うことを諦めていたのです。私は彼に、これから始まる厳しいリハビリの中で、小さな楽しみを諦めてはいけないと伝え、彼が転院するまで毎週週刊少年ジャンプを届け続けました。

この経験から、患者さんが諦めるという状況に直面した際、私はどのようにしてその諦めを活力に変え、前向きな生き方をサポートできるかについて深く悩んでいました。

そして、この問題を解決するために、学生時代の同期から無謀とも思えるチャレンジに再度挑戦することの重要性についてアドバイスを受けました。たとえば、万里の頂上を歩く練習など、普段考えられないような挑戦を経験することは、新たな目標を見つけるために非常に価値があるということでした。

しかし、病院の中だけではそのような経験を提供することは難しいことから、外出や旅行とリハビリを組み合わせたプログラムを提供することで、患者さんの諦める気持ちをチャレンジする気持ちに変えることができるのではないかと考えました。

この記事では、外出・旅行リハビリに関する文献や支援制度を調査し、全国の民間介護旅行会社に訪問してアドバイスを得た経験、そして地域住民の協力を得て実施した3つのお散歩ツアーについて詳しく書いています。多くの理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などのリハビリ専門職や医療・福祉従事者が外出支援について悩むことがありますが、この記事がその悩みの解決策の発想のきっかけの一つになれば幸いです。


1.外出・旅行リハビリテーション業界の調査

(1)文献調査

外出リハビリの効果に関するいくつかの報告から、外出がリハビリテーションに有効であることが明らかになりました。これらの文献は、外出活動が患者さんの身体的、精神的な健康に及ぼすポジティブな影響に焦点を当てています。

旅リハ in 沖縄
移動環境が限られていた日常にはない、新規場面での動作を経験する機会となった。

藤史子ほか. 一歩先のQOLを目指して-旅行の場を活用したリハビリテーションの試み「旅リハin沖縄!」-リハビリテーション研究紀要 (19): 105-108, 2010.Medical Online.

失語症友の会 ドイツ旅行
海外は不安も大きいが、その分旅程を終えて帰ってきた際の達成感も大きい。経験から得た自信が次への行動化に繋がる。

田島明子ほか. P420-Lb 海外への旅と当事者交流のリハビリテーションとしての意義を意味論から考える
-地域リハビリテーション学の理論構築を目指して-日本作業療法学会抄録集 47: 930-930, 2013. Medical Online.

(2)制度調査

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