疲れたときに見せるのが人間の本性
先輩は今日めちゃくちゃ忙しかった。
急に仕事が振られて、取引先でトラブルも起こって。
普段ひょうきんで明るい先輩が、
今日はすごくすさんでいた。
受話器の置き方が普段より雑。ガチャン!って音を立てて置く。誰かがお土産として机の上に配ってくれたお菓子は、ポイっと放ってどかす。
小さくため息をつきながらイライラした様子でキーボードを打つ。
上司からの指摘には、食い気味で「や、だから!」と割り込んで早口で反論する。
「今日は疲れてるんだろうなぁ」
「先輩、頑張ったんだろうなぁ」
そう思う一方で、
機嫌悪いのは分かるけど、
だからといって周りに雑に当たり始めるの、ちょっと無理かもと感じた。
もし仮に、先輩と付き合ったとして、結婚したとして(いや自惚れすぎにもほどがあるが、それは一旦置いておいて)、
恋愛感情が薄れていって、私を女として見れなくなったとき、
先輩はきっと私を雑に扱う。
今は、若くて、関係も浅いから、丁重に扱ってくれるってだけ。
うちの父がまさにそうだった。
釣った魚に餌はやらないじゃないけど、
結婚前後で母への対応がガラッと変わった。
父は母を丁重には扱わない。自分専属の家政婦とでも思っているのか?と疑うような態度である。
今、表面に見えている優しさや誠実さなんてまやかし。そんなもの、いくらでも自作できる。
大事なのはきっと、負荷がかかったときに現れる、その人の本性。
そういうところで人柄を判断しなきゃいけない。
いけないって分かってるのに、
そういうマイナスポイントからは眼を背けて、好きな気持ちを守りたくなっちゃうんだよね。
あぁ、もう手遅れだ。
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