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「おやすみ王子」の話(10/21の日記)

「おやすみ王子」の話をします。

「おやすみ王子」はNHKのテレビ番組で、この日の夜、約4年ぶりに放送された。この番組は作家さんの書き下ろした小説を俳優さんや声優さんが朗読するという内容である。私が初めて見たのは高校生の時だったか。

私はこれをどうしても見たかった。この日のサークルの練習の後、友人らとファミレスにご飯を食べに行き、ちょっと話半分でそわそわしながらタコライスを食べた。早めに解散することになり、帰ってすぐテレビをつけたら番組の始めに間に合った。電気を付けずにテレビの前に正座する。

私が高校生のとき、父親が飲み会からなかなか帰ってこず、他の家族が寝静まっても心配で寝られなかった夜があった。「父さんはどっかの溝か川にはまって動けなくなっているんじゃないか」と本気で考えどうしようの不安が増えていた。
当時の私にはちょっと夜更かしな時間になんとなくテレビを付けていたら「おやすみ王子」が始まった。佐藤寛太さんが読む「青い花」の回だった。

「青い花」は自分が好きなことは他の人がどう言おうと好きでいいじゃない、というような内容で、こんな簡単に言い表せてしまうような安い内容ではなく、もっといろんな人それぞれに寄り添ってくれるような温かい話だった。
これが私には衝撃で優しくて、こんな番組があるのか…!というびっくりがあった。それを俳優さんが優しい声で、本当に私だけが相手としてそこにいるように読み聞かせてくれる。夢でも見ているのかと思っていた。

そのあとできる限りのことを調べたが、翌日も確か一週間後も番組表に「おやすみ王子」の文字は無く、本当に夢だったんじゃないかと半分くらいは考えた。そのときホームページは調べたんだっけ。熱心だったことは覚えているが、ところどころ記憶が曖昧だ。

どうしても紙の本で「青い花」を読みたかった私は、題名や作者の柴崎友香さんの名前で検索し続けた。書籍が見つからなかったのでNHKのお問い合わせフォームみたいなのを探し、もうどうにでもなれ、私は「青い花」が読みたいんじゃい、とメールを送った。翌日に返信が来てとても嬉しかった。

それからしばらくして、熱心に検索し続けた私はNHKの公式のYouTubeにたどり着き、そこに「青い花」の動画を見つけた。叫ぶくらい嬉しかった。
もう何度聴いたか分からない。YouTube版は360°のVR仕様になっているので没入感がさらにすごい。自分のためだけに佐藤さんが読んでくれている感覚がすごい。もうすごいという言葉しか出てこない。当時から変わらず「すごい」と「嬉しい」でこの動画を再生し続けている。全部文字書き写したこともある。実家の勉強机の引き出しにそのまましまっているはずだ。再生と停止を繰り返し、一緒に音読したり考察したり、青い花の花束をハンドメイドしてみたりとかなり熱心に聴き込んでいた。

受験期はこれを聴きながら寝ていたと思う。朗読の声に合わせて、もう覚えてしまった文章を唱えると気づいたら眠っている。これを繰り返してきた。心の安寧のお供なのだ。これを聴くと、誰かがどこかで自分を肯定してくれている気がする。肯定する人がいなくても、それでもいいのだなとも思える。

ぜひYouTubeで「おやすみ王子」と調べてほしい。そして「青い花」を聴いてみてほしい。静かな夜に寄り添ってくれるような動画になると思う。



↓「おやすみ王子」のページ

↓「青い花」のYouTube版


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