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遺言について②~種類~

どんな種類があるのか

遺言書は、遺言者が、生前に、自分の死後の財産処分に関する意向を明確にすると共に、その意向に法的な効力を備えさせることができる重要な書面です。そのため、民法の定めによって、遺言書の作成について厳格な方式を求めています。

そして、民法が要求する遺言書の方式には、大きく普通方式と特別方式に分類することができます。【普通方式】には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つの方式があります。

これに対して【特別方式】には、死亡の危急に迫った者の遺言、伝染病隔離者の遺言、在船者の遺言、船舶遭難者の遺言の4つの方式があります。

このうち特別方式に含まれる4つの方式は、遺言者本人が書面を作成する余裕のない状況などを想定して、そのような状況に置かれた場合にも遺言をすることを保障するためのものです。特別方式による遺言ができる状況は非常に稀なので、私たちが遺言をするときは、普通方式によらねばならないと言えるでしょう。

普通方式に含まれる3つの方式は、いずれも「遺言書」という書面を作成することが必要とされています。遺言は遺言者の生前の意向を明確にすることを目的として作成するものですが、それは遺言者の死後に再確認することができないからです。

したがって、普通方式については、遺言書の作成について厳格な方式を要求するとともに、書面化を義務づけることによって、遺言者の意向が正確に反映されたものであることを、遺言者自身によって明らかにさせようとしています。



普通方式は自筆証書遺言と公正証書遺言が利用されている

遺言の基本形態であって、私たちが遺言をする場合に、原則として従うことになる普通方式について見ていきましょう。


①自筆証書遺言

【自筆証書遺言】とは、遺言者が書面に全文・日付・氏名を自書(自分で書くこと)した上で、その書面に遺言者が押印することによって、成立する遺言を言います。他人が遺言書の作成に関与しないので、誰にも知られることなく比較的簡単に作成することができます。


尚、2018年の相続法改正により、2019年1月以降は、添付書類である【財産目録】(持っている財産を一覧にした表のこと)に限り、自書による必要はなく、すべてのページに遺言者が署名押印をすることを条件として、パソコンなどで作成することが可能になりました。



②公正証書遺言

【公正証書遺言】とは、遺言者が遺言の内容を公証人に伝えて、その内容を公証人が公正証書の形で書面化したものに、遺言者・証人・公証人が署名押印することによって、成立する遺言を言います。

公正証書遺言の作成は、遺言者が公証人や証人の目の前で、遺言内容を伝える手続きが必要ですので、他人が遺言内容を改ざんする危険が非常に少ないというメリットがあります。

しかし、公証人や証人の目の前で、遺言内容を知らせなければなりません。遺言者が誰にも知られることなく遺言を作成したい場合は、不向きな方式だと言えます。

③秘密証書遺言

【秘密証書遺言】とは、遺言者が遺言書を作成して封印し、その封書に遺言者・公証人・証人が署名押印して成立する遺言を言います。遺言の存在自体は明らかになりますが、本文を自書する必要がなく、遺言内容が他人に知られないというメリットがあります。ただし、秘密証書遺言については、自筆証書遺言よりも作成の手続きが煩雑であることから、あまり利用されていません。


特別方式は例外的な方式である

特別方式は、普通方式による遺言ができない状況の下で、例外的に認められる方式です。そのため、特別方式による遺言をした人が、普通方式による遺言ができる状態になった時点から6カ月間生存している場合、特別方式による遺言の効力が失われてしまいます。


①死亡の危急に迫った者の遺言

病気などのために死が差し迫っている人が、3人以上の証人の立ち合いの下で、そのうちの1名が遺言者から伝え聞いた(口授という)遺言内容を書面に起こすことによって、成立する遺言を言います。

遺言者が遺言をした日から20日以内に、家庭裁判所の確認を得なければ、遺言としての効力が認められません。

②伝染病隔離者の遺言

伝染病などのために隔離された人が、警察官1名と証人1名以上の立ち合いの下で、自ら遺言書を作成することによって成立する遺言を言います。遺言書を作成する際に自書であるか否かは問われません。

③在船者の遺言

船舶の上にいる人が、船長あるいは事務員1名と証人2名以上の立ち合いの下で、自ら遺言書を作成することによって成立する遺言を言います。伝染病隔離者の遺言と同様で、自書による必要はありません。

④船舶遭難者の遺言

船舶の上にいる人について、船舶が遭難したために死が差し迫っている場合に用いることができる遺言を言います。証人2名以上が立ち会いの下で、遺言者が遺言内容を伝え、証人が遺言内容を書面に起こすことになります。

証人は遺言者の目の前で書面を作成する必要はなく、証人もまた船舶が遭難している状況にあるため、遭難状態が解消された後に、書面を作成することも認められます。ただし、遺言者が遺言書の作成過程に関わっていないため、家庭裁判所の確認を得ることが必要です。


遺言書の代筆は認められるのか

 

遺言の方式によっては、公正証書遺言や秘密証書遺言など、遺言者が自書しなくても、遺言として有効と認められる場合もあります。

しかし、特に自筆証書遺言の場合は、遺言者自身が自書して遺言書を作成しなければ、遺言が無効になってしまいます。そこで、自筆証書遺言を作成する際に、代筆は許されないのか、どの程度まで他人が関与すると代筆と判断されるのかが問題になります。



自筆証書遺言は、遺言者の意向が正確に示されていることを、遺言者の筆跡によって作成された遺言書により明らかにする方式ですので、代筆は一切、許されません。ただし、病気等の影響で自力では字を書くことが困難な人について、遺言者の自由な筆記に対して影響を与える恐れがない形態での「添え手」の程度であれば、代筆にあたらず許されると考えられています。


また次回をお楽しみに!

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