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イカのエピソードトーク

「やっぱり、養殖は良いですよ。なんだかんだ言ってもね、エサには困らないわけですから。」

"養殖"は安定した生活の代名詞らしい。そちらの世界で養殖は公務員なんですねと言ったら、公務員がよく分からなかったらしく無視された。

「そういえばこないだね、別の区域の仲間が集金しに行ったお宅で酷い目に遭ったそうなんです。仕事柄、イヤな顔されるのはよくありますけどね。手出されたらたまんないですよねえ。こっちはイカでも"タコ殴り"になっちゃいますよねえ。」

タクシー運転手みたいなエピソードトークを聞かされてしまい、何も言えず今度はこちらが無視してしまった。イカがNHKの集金に来るだけでも結構嫌なのに、なんでこんな気持ちにさせられなきゃいけないんだろう。こちらの苦い反応をもろともしない心はもう"元気だけが取り柄"のジジイババアぐらい熟しきっている。気になったので人間で言ったら何歳なんですかと聞いてみた。

「生まれて1年半ぐらいなんで、だいたい5〜60歳ぐらいじゃないですかね」

イカって寿命短いんだなあ、と思いながら
「うち、テレビありません」と言ってドアを閉めた。

扉がヌメヌメしてて最悪だった。