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告白の続き【あとがき】

 

男が神妙な顔つきで女を見ている。片手には日が暮れる前に村の男たちで獲った獲物の、これでもかというほど脂の詰まった部位をしっかりと握っている。男は困っていた。まだ世界に言葉ができる前のこと、自分の知っている求愛ではこの気持ちが正しく伝わらないことを感じていた。周りの男たちの、セックスの為の求愛とは違う。彼女の見てる世界に少しでいいから触れてみたい、できればずっと。彼は純粋で、それでいて貪欲な彼の信念を伝える術を知らない。2人は夜風に吹かれていた。それほど寒くはない日だった。いつもの沈黙が長く、重たく感じた。その日、男は人類史上初めて言葉を発した。そしてこれ以上純粋な言葉は存在しない。1番初めで、1番純粋な。短く、少し震えた声で「好きだ。」


あとがき
これは少し前、前の恋人に告白した次の日に書いた。彼女の誰にも媚びない様に惚れていた。彼女の事がもっと知りたくて、それはこれからの時間が満たしてくれると思っていた。

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