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智恵子抄

図書館に行くと時々、その時の自分に必要な内容であったり、心が動かされる本と出会うことがあります。
その本によって、今まで自分では思いもよらなかった行動を促されたり、また、時を経ても、忘れられない言葉や文となったりするものもあります。
今回、図書館で借りた本の数冊も、今の私にとってとても必要で、善い本ばかりだったと感じています。

その中の一冊で、特に今こそ私が読むべき本だったのではないかと、思える本に出会えました。
高村光太郎さんの『智恵子抄ちえこしょう』です。

図書館の詩や短歌、俳句、川柳に関する書籍が並ぶ棚に、この赤色の本が置かれていました。
他にはないこの色に、惹かれて手にしました。
表紙を見ると、銀色の文字で智恵子抄とあります。
私が学んだ、いつかの国語の教科書にも、この中の確か「レモン哀歌」があり、レモンと智恵子(光太郎の妻)と高村光太郎という私の中のつながりで印象に残っていましたが、きちんと智恵子抄は読んだことがありませんでした。
書店で智恵子抄を見かけたこともありましたが、手に取ってペラペラとめくって見ても、読んでみようとは思えませんでした。
それが今回、このような形で読むことになるとは思いもしませんでした。

表紙をめくると、素敵なデザインの絵のようなものがあります。


後で分かりましたが、これは、智恵子さんの切り絵だそうです。
素晴らしいセンスです。
梅の木のように見えます。

この本は、昭和47年12月1日新版第52刷、〔通販第70刷決定保存版〕とあり、編集兼発行者は澤田伊四郎、発行所は龍星閣とありました。
昭和47年は西暦だと1972年なので、今から50年前に発行された本です。
本の用紙も和紙のようで手触りがよく、また、当時の印刷や今では使われていない活字などがあり、それでも読んでいけることが楽しくなっていました。
その楽しさと同時に、内容の素晴らしさに圧倒されていました。
教科書に載っていた智恵子抄はほんの一部で、この本の中には、驚く程素晴らしい光太郎さんの詩や文章が存在していました。
こういう時の感動は、ずっと探していた美しい宝物を見つけてしまったような、そんな興奮と感動に身が包まれるようです。
読み進めるうちに、慰められたり、どこか背中を押されるような、勇気が出てくるような、そんな感じも受けました。
そして最後まで読み切った時、
「これはとても善い本だ!」
と、一人実感しました。
どうしても手元に欲しい本だなと思ったので、過日、インターネットでこの本よりも古い発行の本ですが、手にすることができました。

この本の編集、発行にあたっては、上記の澤田伊四郎さんの力によるところも大きいので、次回、この本の巻末にある「編集者附記 澤田伊四郎」の全文を書いておこうと思います。

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