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ギリシャ神話:テュポン(怪物)

最大最強の怪物で、神々の王ゼウスに比肩するほどの実力をもち、そのゼウスを破った唯一の存在でもあるテュポン。
母・ガイアと父・タロタロスの間に生まれました。

体は星々と頭がこするくらい巨大で、その腕は伸ばせば世界の端から端までにも達しました。

ももから上は人間と同じであるが、ももから下は巨大な毒蛇がとぐろを巻いた形をしていると言われています。

底知れぬ力を持ち、その脚は決して疲れることがないようです。
肩からは百の蛇の頭が生え、火のように輝く目を持ち、炎を吐く。

またあらゆる種類の声をだすことができ、声をだすたびに山々が鳴動したと言われています。

テュポンは不死の怪女・エキドナとの間にオルトロス、ケルベロス、ヒュドラ、キマイラが生まれました。
また、ネメアの獅子、不死の百頭竜(ラドン)、プロメーテウスの肝臓を喰らう不死のワシスフィンクスパイアゴルゴン、金羊毛の守護竜スキュラ、のちに多くの怪物がテュポンとエキドナの子供とされました。

テュポンはまた、多くの荒々しい風を生んだとも言われています。

出土されたテュポンのブロンズ像 出典:Wikipedia


ギガントマキアでゼウスたちを懲らしめられなかったガイアは、タルタロスと交わり、最強の怪物テュポンを生み出してオリュンポスを攻撃させました。

テュポンは世界を大炎上させ、天空に突進して宇宙中も暴れ回りました。
これには神々も驚き、それぞれ動物に姿を変えてエジプトの方へと逃げてしまいました。
しかし、ゼウスだけはその場に踏み止まり、テュポンとの壮絶な一騎討ちが始まりました。

ゼウスが雷霆とアダマスの鎌でテュポンを猛攻撃すると、大地はおろかタルタロスまで鳴動し、足元のオリュムポスは揺れました。

テュポンは万物を燃やし尽くす炎弾と噴流でそれを押し返しました。

両者が発する熱で天と海は煮えたぎり、大地は炎上しました。
冥府を支配するハデスも、タルタロスに落とされたタイタンたちも恐怖したと言います。

決戦は天上の宇宙で繰り広げられたことで、全秩序は混沌とし、全宇宙は焼き尽くされて崩壊してしまいます。
両者の実力は五分五分です。
しかし、接近戦に持ち込んだゼウスがテュポンのとぐろによって締め上げられる怪力で敗れてしまいます。

テュポンはゼウスの雷霆とアダマスの鎌を取り上げ、手足の腱を切り落とし、デルポイ近くのコリュキオンと呼ばれる洞窟へ閉じ込めました。

ゼウスが幽閉されたとされるコリュキオン洞窟 出典:Wikipedia


そしてゼウスの腱を熊の皮に隠し、番人として半獣の竜女デルピュネを置き、自分は傷の治療のために母ガイアの元へ向かいました。

ゼウスが囚われたことを知ったヘルメスパンは、デルピュネを騙して手足の腱を盗み出し、ゼウスの救出に向かいます。

2人はゼウスを治療し、力を取り戻したゼウスは再びテュポンと壮絶な戦いを繰り広げ、今度はテュポンに深手を負わせて追い詰めます。

テュポンはゼウスに勝つために運命の女神モイラたちを脅し、どんな願いも叶うという「勝利の果実」を手に入れます。
しかし、その実を食べた途端、テュポンは力を失ってしまうんです。
実は女神たちがテュポンに与えたのは、決して望みが叶うことはないという「無常の果実」だったのである。

モイラさん達!脅しに屈しなかったのね!

テュポンは悪あがきとして全山脈をゼウスに投げつけようとしましたが、雷霆によって簡単に弾き返され、逆に全山脈の下敷きになってしまいます。

火を噴くエトナ山 出典:Wikipedia


テュポンはシケリア島まで追い詰められ、エトナ火山を叩き付けられ、その下に封印されました。
それ以来、テュポンがエトナ山の重圧を逃れようともがくたび、噴火が起こると言われています。

そしてゼウスは、ヘパイストスにテュポンの監視を命じ、ヘパイストスはテュポンの首に金床を置き、鍛冶の仕事をしていると言います。

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