黒く光るベンツに向かて
「尊厳」と「供養」(生と死)
黒に近いグレーのベンツに向かって、老いぼれジィジiに抱かれてバイバイをした2021年11月21日の出来事を、エマに語る為には時間が必要だった。
「供養」の葬儀が終わり、冷たい雨のベンツに向かって、
「エマちゃん、バァ-バにバイバイして!」
と傍らの妻が言ったことに答えて、自然に君はバイバイをする物語を書く為には、少し時間が必要だった。
老いぼれジィジiの妻が言ったバァ-バとは、エマの父親であるジョージの母親である。
老いぼれジィジiと妻にとって、バァ-バは深いつながりのある関係には残念ながらいたなかったけれど、間違いなく「尊厳」を持つひとだった。
エマの生まれる前から死を悟っていたバァ-バに対して、
まだ若く言葉を飾る傾向にあるジョージから語られる言葉はいつも淡々としたものであることを、老いぼれジィジiは感じていた。
間違い無く世界の誰よりもエマのことをたいせつに想い、悔しがっていた「尊厳」を持つひとだった。
かしこいエマは自然に、黒く光るベンツに向かて、バイバイしたのだろう。
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