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私と推しと彼と解釈違いの恋

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短編小説「私と推しと彼と解釈違い」のまとめです。 アイドル現場で知り合って彼氏と彼女になった私たちが、メイドカフェとコンカフェでそれぞれ次の推しに出会って、「推す」ということの…
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【小説】私と推しと彼と解釈違い①

  気持ちのいい秋晴れの日だった。だからなんで、よりによってこんな日に、ってあの時は思ったけど。今思えば、それでよかったような気もする。例えば雨の寒い日に、あの別れのことを思い出してしまうとしたら、嫌すぎる。 ・・・ 「あのね、もう、無理みたい」 「えっ、何が」 「…別れ、たい」 「はぁぁあ? 何それ、なんで」 「……解釈が、違う。しかも、ひろくんの解釈が、私には無理なやつなの」  驚いた顔の彼の後ろ、大きな窓の外は気持ちのいい晴天。  言っちゃった。  まだ言うつもりじ

【小説】私と推しと彼と解釈違い③

「はじめまして~! もいかフェアリーです!」  彼が連れて行ってくれたお店は、私がよく行ってた“メイドカフェ”とは全然違う世界だった。 「お嬢様の冒険者様ってあんまりいないから、嬉しいです~。ひゃ~、なんか綺麗なお嬢様で緊張しちゃう」 「彼女、普段から1人でメイドカフェとかガンガン行ってるから、全然大丈夫だよ」 「うわ、出た“俺のカノジョ”マウント! うちリア充禁止なんで、罰ドリンクいただきますね!!」 「そんなんなくても出すから、どうぞ飲んで。今日は彼女にここの楽しさ伝えた

【小説】私と推しと彼と解釈違い②

 今思えば、最初の最初のきっかけは、私だった。  共通の1推しが、メイドカフェにゲスト出勤するイベントがあって、当然予約して行って、チェキ撮って、予約コースのあんまり高くないシャンパン飲んで。メイドさんはみんな可愛いし、駅からも近くて、ピンクで清潔感があって可愛い空間で、ゆっくり座って推しと話せたり、ごはん食べたり、ステージ見たりできるのって、楽しい! って完全に感動しちゃって。それまでよく行ってたライブハウスは…ライブは楽しいけど、暗いし混んでるし、夏とか色々キツイ時もあっ

【小説】私と推しと彼と解釈違い④

「え~、亜紀てんはそれでいいわけ?」 「それでいいって…いいつもり、だけど」  そう、小さな違和感。それは、ヲタとしてじゃなく、彼女としての嫉妬…だよね、やだ私恥ずかしー。そんな風に女子トークのネタにした、つもりだった。メイドカフェのお嬢様友達のまきろんは、いつもフリルがわしゃわしゃした可愛いワンピース姿で、私の他の友達にはいないタイプ。可愛い声で結構バッサリ毒舌なところも、他の友達とは違うから、私もなんでも気楽に話せちゃう。 「彼氏と彼女の話って言われるとよくわかんないけど

【小説】私と推しと彼と解釈違い⑤(おわり)

「あー、まぁ言ってることはわかるけど」 「わかる?」 「まぁ、日本語としてはわかる。でも、全部に共感はできないかなー」 「…そっかぁ」  アイドル現場でもメイドカフェでもコンカフェでもない。2人で近所でお茶を飲むなんて、久しぶりだ。モーニングが有名なチェーン店のボックス席で、この前まきろんと話した、自分なりの「推しについて」の意見を彼に伝えた。まきろんには脅かされたけど、ずっと現場で見てきた彼なら、ちゃんと、丁寧に、心を込めて話せば、どこかでわかってもらえると思ったから。 「