記憶

小学生の頃、友だちに「泣きながら寝ると次の日すごく目が腫れるよね」と言ったら、その友だちはとても驚いた顔をして「泣きながら寝ることなんてあるの?悲しいことがあるの?大丈夫?」と言った。
私は咄嗟に「たまにね」と曖昧に笑ってみせた。
この子は泣きながら寝ることがないんだ、いいな。
みんなそうなのかな。

泣きながらご飯を食べることもよくあった。
特によく覚えてるのは、お母さんが家出した日の朝。
お父さんが隣でなんやかんや言いながらわたしを励ましてくれてたが、私はしきりに泣きながらトーストを食べた。
何の味もしなかった。

毎日毎日家では嫌なことや悲しいことがたくさんあったけど、どの友だちにも話さなかった。
恥ずかしかった。

学校から帰ってくるとお母さんが出迎えてくれる友だちが羨ましかった。
お母さんが帰ってくるのが遅くて、職場や携帯に電話をかけようかずっと迷ってたあの時間。寂しかったな。
なんでもないような顔で家族の喧嘩の声を聞きながら宿題をやってたけど、我慢できなくてこっそり泣いてしまったとき。
一家心中って、本当にする家族いるのかな?とかぼんやり考えたとき。

わたしは十分に愛されていたし、大切に育てられた。
とても幸せだった。
きっとわたしよりつらい思いをしていた人はたくさんいる。

だけど、子供の頃のそういった記憶は大人になってもなかなか消えないものだなと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?