素直になること

小学校1年生のとき、好きな男の子に「もう一緒に話さないから」と言ったことがある。
小学校5年生のとき、いちばん仲良しで大好きだった女の子の友達に「私じゃなくて別の子と仲良くした方がいいと思う」と言ったことがある。
勿論、どっちも本心ではなかった。

大学3年生のとき、父と母が大喧嘩をした。
母が怒っている姿を見てとても悲しい気持ちになった。母が怒っている時は大抵悲しいときだと知っていたから。
いつまでも仲良しだと思っていた2人が離婚するかもしれない。
「絶対」とか「ずっと」とかって無いんだな、とそのときはっきり思ったのを覚えている。

大人になり、初めて男の人と夜を過ごした。
それは想像していた以上に幸せで温かくて心地よいものだった。
彼に抱きしめられながら頭を撫でられているとき、ずっと寝たふりをしていた。寝ていればずっとそうしてもらえると分かっていた。
こんなに幸せなことってあるんだ、と思った。
結論から言うと、2週間後には彼と連絡が取れなくなった。

それから色んな人と寝た。
別に全然大丈夫、どうせ何も期待してないし。遊んでるだけで好きじゃないから。男の人に頼らずにわたしは生きていくの。
そんなふうに強がることで本当に強くなった気がした。

そんな日々を1年ほど続けたあと、彼氏が出来た。
優しくてまっすぐで嘘がなくて穏やかで、わたしには勿体無いような人。
毎日が陽だまりのように温かくて幸せな一方、わたしの悪い癖がむくむくと頭を出す。
時折、「早くわたしのこと嫌いにならないかな」と思う。彼がわたしに飽きて浮気をすることを想像する。私が何かの病気になって彼に別れを告げるところを想像する。
そうすると「そうだよな、いつかは別れるよな」と謎の安心感を覚える。

彼はわたしにずっと優しいし、たくさん愛情表現をしてくれる。
「大好きだよ」と彼が言う。
わたしは小さく微笑みながら目を逸らしてしまう。
彼が「来年またここ来たいね」と言う。
来年も一緒にいるか分からないじゃない、と心の中で呟く。
かなり可愛くないし失礼な彼女だと分かってる。
でも期待してダメになってしまったことを考えると怖くて仕方ない。傷つきたくない。
そんなずるい気持ちが大きすぎて今日も強がってしまう。最初から諦めてしまう。
最低だし子供っぽいし面倒くさい。
そんなの分かりきってるけどわたしにはこうやって生きていく以外の方法がわからない。






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