知りたくなんかなかった
総合病院で会計待ち
見ちゃった会っちゃった知っちゃった
見たくなかった会いたくなかった知りたくなかった
目はがっつり合ったけどすぐに反らした
彼女は先に私に気づいていたのだろうか
いやそんなことはどうでもいい
ただ、目が合ってしまった
彼女だと認識してしまった
彼女と離れた位置に座り直したのに、動向が気になって見てしまう自分に嫌気が差す
カバンや持ち物に例のものがついていないか
ついてなかった
少し安心した
けど100%のそれではなかった
私は気になってしまっているのに、彼女は振り向きもせずスマホを触っている
どうか会計で私の名前が呼ばれませんように
彼女に、私だと確信を持たれませんように
話し掛けられることなどありませんように
そうこうしてるうちに名前が呼ばれた。
彼女の名が。
やっぱり人違いではなかった
会計に向かう姿
変わらず細身だけどそれは明らかに目立っていた
やっぱりそうか
そうなんだな
見たくなかった会いたくなかった知りたくなかった
彼女に故意に何かされたわけではない
だけど不義理だと思ったことはある
それだけなら「ただそれだけ」で済むけど、自分が叶えられていないものを叶えていけている彼女への妬み嫉みも相まって、余計に心がざわつく
身体中の血液がさざ波立ちながら駆け巡る
指先の感覚が失われていく
先端は血が通わなくなっていくのに深部は熱く火照るように。
こんな気持ちにさせる彼女に憎ささえ抱きそうになる
いや、抱きそうにというかもうすでに抱いているのかもしれない
彼女は自分の与り知らぬところで人にこんな思いをさせている
なんなんだよ
平気な顔して無神経に不義理を働いたくせに
私からすれば心臓に毛が生えていると思うには充分なほど、配慮が足りない自分に気づいてもいないくせに
彼女は別に特別悪いことをしたつもりもないだろう
友達もそれなりにいるのだろうし、10人に聞いたら10人全員に性格悪いと評されるわけでもないと思う
ただ私とは合わないと思うだけ
単純に、嫌いなのだ
私が彼女を嫌いなだけなのだ
だから私に起こっていないのに彼女の身には起こる喜ばしい出来事が、ひたすらにこんなに私の心をかき乱す
誰に対してもこうなるわけじゃないけれど
見たくなかった会いたくなかった知りたくなかった
ただそれだけ
これからはどうか、私の前に彼女が現れませんように
今日よりもっとずっと、ばったり会って話さなきゃいけないような状況が訪れませんように
私からは見にいかないから、彼女の動向を知らせるような何かに出くわすことがありませんように
今日は泣いて、ただ、ひっそりとそう願う
2024.08.21
…………………………………
コーチングは学んだけれど、こんなふうに思うことも当たり前にある
人間だからね。
ほんとの本音。
限られた人にしか、
ううん。違うな
もしかしたら誰にも打ち明けられない心の中のこと。
たとえるなら
もののけ姫に出てくる赤黒い祟り神のような
どうしようもない黒い気持ち。
でもこうして吐き出してみると改めて思うのだ。
それがあってこそ、生きるってことだと。
そういうことだと。
自分の気持ちを否定しないで
この時のやり場のない気持ち、やるせなさ、情景、全身の血が逆流したような感覚さえも、
その時の私だけが感じ得たこと。
ひとつずつかみしめて、自分の実にする。
決して感じなかったことなんかにしない。
無理に消し去ったりしない。
どんな感情もどんな出来事も
自分を象る大切なピースなのだから。
嫌な気持ちは味わいたくないものだけれど、そんなふうに思って生きていきたい。
うん。そう。
生きていく。
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