見出し画像

わかったこと、伝えたいこと

今年ももう、残すところあと僅かとなりました。
こうして「あと僅か」と口にするたび、新年への期待や休暇のワクワク感よりも、焦りが勝ってしまいます。私はここ数年、年の瀬になると決まって気分が落ち込んでしまうのですが、SNSを眺めていると案外そういう方は多いのかもしれません。昨今の情勢や風潮もありますし、焦燥感に苛まれる理由は様々あるのでしょう。

わかりやすい例だと「お金が貯まらなかった」とか「パートナーができなかった」とか。
今年の始めに薄っすら期待していた理想と、目の前の現実とのギャップに絶望してしまっているのではないでしょうか。
どれも“変われなかったこと”に対する焦りだと思います。

そういう、“自分で付けた通知表”を眺めて、がっくりとしてしまうのです。
そして挙げ句に「変われなかったのも、上手くいかないのも結局自分のせいだ」とか「努力不足による結果だ」と自身を責めてしまいます。
加えて、ネットでは追い討ちをかけるように年末の楽しい一瞬を切り取った投稿がたくさん流れてくるのですから、自分との気持ちの差に落ち込んでしまいますよね。

別に、自虐や自己犠牲を美徳としているわけではないのです。
むしろ昨今は、「自分を大事に」とか「なりふり構わず逃げろ」というニュアンスの言葉が飛び交っています。その通りだな、と思う反面、自分を律する心が強い人たちはその言葉に追い詰められてしまうのです。

たとえば、無意識に自己を肯定することができているはずの、いわゆる“悩みが無さそうな人たち”が、その言葉を盾に好き勝手な振る舞いをする(しているように見える)こともあり、それを目にしては「こうはなるまい」と、“自分を大切にする”ということを“甘え”と捉えて律してしまうことなどがあります。

追い詰められてしまう人は、責任感が強かったり、善悪の線引きがはっきりしている方が多い印象があります。「これは良いけど、これは駄目」と、常に何かを判定していて、自分が“悪”としたものに対していつも心がチクチクとしている。ソーシャルメディアで流布されているお説教にも、極論的な価値観を押し付けたようなものが多い気がしますし、それに沢山の“いいね”が付いていれば、ついつい正論と感じてしまい、それを自分に当てはめて、実は自分もそこからあぶれていることに気付いたりして落ち込んだりします。

「なりふり構わず逃げろ」という癖に、「どうなっても自己責任だ」という論調を“自分の物差し”とした結果、予想した通りにならなかった現在の自分に対して、怒りが湧いてきたり、それに伴う責任感に押しつぶされそうになってしまいます。

僕はそうやって悩んで悩んで、最近やっと気付きました。
世の中はもっと複雑で、グレーゾーンばかりなのだと。
何だか良く分からないふわっとした価値観が、いっぱい在るのだと。

それを端から白黒付けていたら、キリがありません。
そんなことをしていたら、それだけで人生が終わってしまう。

何かと「自己責任」と叱責される場面を見かけますが、実のところ環境による影響も小さくないのだと、どこかで聞いたことがあります。だとすれば、現在の自分の姿に対して自身が負う責任は、おおよそ半分ぐらいでいいのではないでしょうか。少なくとも、“今なんだか苦しくてしょうがない人たち”は、それぐらいの気持ちでいい気がします。
グレーなことがあるのも当たり前で、だからこそ人間は“言葉”という互いに歩み寄るための手段を持つのではないでしょうか。
世の中に対しても、自分に対しても、片っ端から善悪の判定をするのはもうやめにしたいものです。顔も知らない人間の無責任な一言だけで、自分を無理に変えようとする必要は無いのではないでしょうか。

それから、僕の目の届く範囲で頑張っている人たちへ。
無責任なことは言いたくないので、目の届く範囲の人たちに限定します。
あと僕はアドバイスやお説教ができるような偉い人間ではないので、伝えたいことだけ、勝手なお願いだけ書いておきます。

今のあなたは、今日までの人生と様々な要因があって、“今のあなた”です。
それは法律で定められたこと以外は、決して他の誰かが断罪したり、値踏みできるものではありません。
されたとしても、その人はたった1秒だって、あなたの人生や言葉を奪ったり、同じ経験は出来ないのだから、結局はあなたに関係のないことです。

だからどうか、世間の心無い言葉で傷を増やさないで。
「自信を持って」とか「きっと上手くいく」とかは言いません。言えません。でも少なくとも、“僕の目の届く範囲のあなた”は、あなたなりに必死に頑張って生きていることを僕は知っています。投稿される一言から、僕にも届いています。これだけは伝えておきたいです。

「何もない」と嘆いていても、間違いなく「それでも生きてきた時間」はあります。その価値を決めることができるのは、あなただけなんです。僕や他人じゃ決められないんです。

だからどうか、その価値を見出すために明日も生きていてください。
出来れば健康で、笑っていてください。
出来れば、あなたなりの幸せを感じてください。

今年は僕も、いつもよりは安らかに年を越せそうな気がしますよ。
2023年、本当にありがとうございました。

それでは、良いお年を。

(写真は秋に撮った日本アルプス)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?