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歌舞伎鑑賞教室に感謝している。

歌舞伎が好きだ。
どれくらい好きかというと、今年35公演見たくらい。
いつから好きかというと、大学生のとき。
かれこれ10年間、私の「歌舞伎熱」はとどまることを知らず、何なら年々燃え盛りっぷりが激しくなっている。
ではなぜこうなったのか?これを振り返ってみたい。


歌舞伎との出会い:高校で行った歌舞伎観劇教室

私が歌舞伎を初めて観たのは、高校生の時、高校の授業の一貫で行った「歌舞伎鑑賞教室」だった。

(たぶんこの公演。)

もともとミュージカルを部活でやっていたので、ミュージカルは幾度となく観ていた。
なのでむしろ、観に行く前は「古臭いんだろうな…」とあまり期待はしていなかった。

初めての国立劇場。普段行っていた帝国劇場や劇団四季の劇場とはまた違う、なんとも厳かな空間にそわそわしたことを覚えている。
私が座った席は、運よく1列目の花道から3,4席上手寄りの場所で、今思うとなんとも贅沢な初歌舞伎体験である。

鑑賞教室から10年ちょっと。
俳優祭に行くほどの歌舞伎好きになりました。
この爆発した綿毛のようなシャンデリアはのこしてほしい。

中村壱太郎さんの解説を経て、義経千本桜の河連法眼館の場。
解説のとき、静御前がやたら美人ですごかったような記憶があるのだけれど、あれはどうやら中村隼人さんだったらしい。
(何でもっとちゃんと覚えていないの…!)

続く河連法眼館の場は、佐藤忠信が実は狐だった~!というなかなか意味の分からない場面。
あの時の源九郎狐は5代目の中村翫雀さん。いまの鴈治郎さんだった。
ふくふくとしたおじさまが、あり得ないほどの身軽さでふさふさと舞台を駆け巡る。この光景は、私にとんでもない衝撃を与えた。

(おぼろげながら、ワイヤー吊りで舞台上をリアルに「飛んで」いたような記憶があるけれど、正しい記憶かはわからない。)

歌舞伎、超パンクなんだが~~~~!?!?!?!?

そう。
歌舞伎、超斬新だった。
めちゃくちゃ新しくて、でもなんかすんごいかっこよくて、やっべ~~となった高校生の私。

自分のお金で始めて行った大学生のある日:2014年(演目不明)

大学に入り、都内から少々離れた神奈川県の終着駅付近に住み始めた私。
生活も落ち着いてきてこう思った。

舞台、観たい~~~~~~~!!!
でもミュージカル、年々チケット取りにくくなってて無理~~~!
あと半年前予約とか予定わかんないよ~~~~~!!!!

そこでふと思った。
歌舞伎ならチケット、取れるんじゃないか…!?
(ちょっと失礼)

高校生の時に観た歌舞伎、確かすごかったよなあ…行ってみるかあ~
それくらいの軽い気持ちで行った歌舞伎。

たぶんだけれど、この時にはそんなにハマらなかった。
ただ、「舞台を観たい」という一番手っ取り早そうな歌舞伎という手段を見つけ、そこから時折歌舞伎座に行くようになったのだと思う。

歌舞伎に完全に"落ちた"日:2015年8月納涼歌舞伎「京人形」

これは今年の納涼歌舞伎


何度目かの歌舞伎か分からないが、私はこの時とうとう歌舞伎に”落ちる”ことになる。

きっかけになった演目は銘作左小刀の京人形。

中村勘九郎さんの彫物師左甚五郎に、七之助さんの京人形の精。

七之助さんの京人形に完全に撃ち抜かれた。
美しすぎる~~~~~~!!!!!!!

あとこれが、演目として面白すぎる。
主人公である左甚五郎は東照宮の眠り猫を作った人。

この人が、とある花魁に首ったけになって、その人そっくりの人形を彫る。
(この段階で結構やばい)

完成した京人形がうまくできて、気分よくその人形にお酌をしたりなんなりと楽しむ。
(なおこれは女房の許可を得てのこと。だいぶやばい)

そうすると人形が動き出しちゃう。
なのにはじめは魂を込めた甚五郎の身振り手振りを真似る無骨な動き。
見た目は完璧なお姫様なのに動きはおじさん。
そこで花魁が落とした手鏡を渡すと、人形も花魁のような動きになる。
(なんで花魁の鏡もってんねん、返しな…?)

という美しくもちょっと笑える舞踊劇が展開される。
そうしたら急に、甚五郎夫妻が娘と偽ってかくまっていた井筒姫を狙う敵が現れ、何が何やらわからないままに大立ち回りになる。
(なんで!?!?)

…という初心者的にも最高の演目で、かつあまりにも七之助さんが美しい。
もう完全にここで”落ちて”しまった。

そしていま:年間で35公演を観る立派なオタクに成長しました

今でも中村屋が大好きなので、東京から小倉まで遠征しちゃう。

歌舞伎を初めて観た高校生のあの時。
私はその場で歌舞伎に"落ちた"わけではなかった。

でもあの時、もしも「授業で」歌舞伎を観ていなければ。
きっと私は大学生になったときにわざわざ行ってみようと思わなかった。

「歌舞伎鑑賞教室」が行われた国立劇場大劇場は1,520席。
学生が行く場合はは1,800円だそうなので、仮に満席になると想定してもおおよそ274万円しか売上はたたない。利益はほぼ出ていないのではないかと思う。

あの公演を経て、私はこの10年間で3桁万円は使ったなかなかなオタクに成長した。

間違いなく、あの時の観劇教室に人生を変えてもらった。
おそらく私のように、観劇教室をきっかけに歌舞伎に興味を持つ人は何人もいたことだろう。

国立劇場の再開場はまだ決まっていない。
場所を変えて観劇教室も続くようだけれど、なんとも悲しい。

若者に伝統芸能をみせる。
すごく良い事業だなあと、その事業をきっかけとして歌舞伎に"落ちた"者としてしみじみと思う。

大好きな中村芝のぶさんが歌舞伎座の真ん中に一人で立っているお姿を
拝見できた最高の2023年でした

いただいたサポートは、読書に美術館に歌舞伎鑑賞につぎ込ませていただく所存です。