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私が選ぶ最も難解なホラー映画(レビュー:『霊的ボリシェヴィキ』)

オススメ度:判定不能

集音マイクがそこかしこに仕掛けられた奇妙な施設。呼び集められたのは、かつて”あの世に触れた”ことがあるという”ゲスト”と呼ばれる男女たちだった。その中の一人、由紀子には、幼い頃”神隠し”に遭遇した過去があった。強すぎる霊気により一切のデジタル機器が通用しないこの場所で、静かにアナログのテープが回り始める。やがてテープに記録されてゆくのは、人間の領域を踏み越える禁断の心霊実験だった・・・・。

 毎週毎週ホラー映画のレビューを書いているわけであるが、どうにもこうにも言語化が追いつかない作品というのも稀にあって、なんでそんなことを書いてるのかと言うと、今回の『霊的ボリシェヴィキ』もそうだったからである。本作の視聴はこれで2回目であるが、どう評価すれば良いのか全くわからない。

 初回視聴時は細部の訳の分からなさに完全に幻惑されてしまい、話の筋すら理解できなかったが、今回は皆で見て話し合ったことで、何とか話の流れだけは理解できた。細部の論理を考え出すとどんどん深みにハマるが、おそらく骨子としては「百物語を儀式化して、霊気を高めてあの世を召喚しようとする(が、実際はあの世ではなくバケモノを召喚しようとする)」という話だと思われる。さらにバケモノの召喚にすら失敗し、最終的には神隠しに遭った女の子を現世に救出して終わることになる。

 ボリシェヴィキの要素は(これは友人が話していたことの受け売りだが)、ボリシェヴィキを「胡乱で大きな力を信奉する苛烈な相互監視共同体」という概念にまで単純化することで、「胡乱で大きな力」に「あの世=霊気=バケモノ」を代入する思考と思われる。百物語という、いわば、のんきな遊びを、まるでソビエト共産党のような苛烈なディストピア空間に変えることで、夢想的な共産主義概念の位置に巨大な霊的エネルギーを据え置き、「霊的召喚の可能性を上げる」試みとでも言えば伝わるだろうか……。無論、この解釈が正解なのかどうかも分からないが。

 とにかく、個々の背景が分からない。キャラクターの説明がほぼ一切なされないため、彼らがどういう動機で集まり、何を目指し、あの世なりバケモノなりが召喚されたことで何が起こるのかも全く分からない。だが、これは分からないように作られているので、分からないこと自体は減点要素ではない。問題は分からないことで面白いのかどうか、だ。

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