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喋る人形からIoT家電へ(レビュー:『チャイルド・プレイ』)

オススメ度:★★★★★

「親友のためならなんでもするよ」30年わたり、見る者にトラウマを植え付けてきた凶悪な殺人人形シリーズ「チャイルド・プレイ」が、ホラー映画史上№1の興行収入を叩き出した「IT/イット“それ”が見えたら、終わり。」の製作陣を迎え、現代版として映画化。最先端テクノロジー企業・カスラン社の期待の新商品、“バディ人形”。引っ越しをして友達がいない少年アンディは、誕生日に音声認識やセンサー付きカメラ、高解像度画像認識などの機能が付いた高性能人形を母親からプレゼントされる。自らを“チャッキー”と名乗る人形だが、実は欠陥品だと判明。的外れな受け答えに最初はあきれるアンディだが、「君が一番の親友だよ」と話すチャッキーに次第に夢中になる。その後“彼”が豹変することなど知らずに―。

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「うーん……チャイルド・プレイか。レジェンド作品のリメイクではあるが、そもそもオリジナル作品がそんなに好きじゃないんだよな」

 と、思いながら見た本作であったが、これは思った以上の良作だった。いま、この時代にリメイクする価値のある作品と言えるだろう。

 もしオリジナル作品を見ていなくても、皆さんもおそらく「人形(チャッキー)が人を殺す」というコンセプト自体はご存知だろう。これはオリジナルにおいては、殺人鬼の悪霊が人形に乗り移ったことで惨劇が発生している。

 しかし、「人形が人を襲う」というのは、襲われる人にとって恐怖なのは間違いないのだけれど、一方で、殺人鬼からしても大変である。当たり前だが、卑小なる人形の体など不便で仕方がないのだ。その点でチャッキーにはある種の悲壮感がつきまとっていた。ジェイソンやフレディと並ぶホラーアイコンのチャッキーだが、彼はなんとも窮屈な存在なのだ。

 ところが、だ。本作ではその設定を大きく変えてきた。なんと殺人鬼も悪霊も出てこない。「喋る人形」であったグッドガイ人形は最先端のAIを備えたバディ人形(IoT家電)となった。超高性能なAlexaといったところだ。本作では、生産工場の末端労働者がクビになった腹いせに、AIのプロテクトを外したことでバディ人形が暴走、それが本作における惨劇のきっかけとなる。

 つまり、かつては殺人鬼の悪霊によって引き起こされた惨劇は、今やAIの暴走にその立場を譲ったのである。それだけ「AIの暴走」が現代においてリアリティを獲得したと言うことだろう。

 もちろん「AIの暴走」自体は手垢のついたネタではあるし、実際に本編の中でもメタ的にネタにされているのだが、

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