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ミスティックシールド増量中(レビュー:『ウィジャ・シャーク2』)

オススメ度:★★☆☆☆

> ウィジャ盤の力で地獄から召喚された無敵の幽霊ザメ「ウィジャ・シャーク」との激闘から数ヶ月。オカルトマスターのアンソニーはサメとの戦いの果てに地獄を彷徨っていた。彼を復活させるべく家族や仲間がその方策を探る一方、地獄の支配者である悪魔カルドゥーラはサメを現世に解き放ってしまう。巨大化し街をも破壊する力を得た幽霊ザメに人類は成す術もなく蹂躙されるが、アンソニーにはある秘策があった……!唸れ!サメはめ波!輝け!ミスティック・シールド!オカルト殺法で再び敵を打ち破れ!

 ウィジャ盤を迂闊に使った若者たちが、悪霊に取り憑かれる代わりに幽霊ザメに襲われた前作『ウィジャ・シャーク』。そのあまりの超低予算っぷりは「BBQシーンなのに肉は一切映らず皿すら汚れていない」という程で「そんなところまでケチるんだ……」と衝撃を受けたものである。

「ウィジャ盤で幽霊サメ」というワンアイデアは(サメ映画ジャンルでは)光っているものの、それ以外は基本的にZ級映画のテンプレのような進行であった。だが、本作は終盤における1シーンでレジェンドと化した。そう、ミスティックシールドである。

 幽霊ザメにやられた主人公の父親が霊体となり、「幽霊同士なら互角!」という理屈で幽霊ザメに挑むのだが、その時に突然手からビーム状のシールドを展開する。これがミスティックシールドである。

「幽霊同士なら互角に戦える」には「頭は悪いが理屈は通っているな」「むしろ頭が良いのでは?」と思わされたが、その次の瞬間にミスティックシールドだ。その一線を越えた頭の悪さは妙なドライブ感を生み出し、クソ映画であることには違いないが、しかし、忘れられないインパクトをわれわれに残したのである(ミスティックシールド以外はほぼ全て忘れたけど)。結果、われわれは見えている地雷と知りながらも続編の2を踏むこととなったわけだ。

 前置きが長くなったが、さて、本作である。これはなかなか評価が難しい。いや、Z級映画であることは間違いないのだが……。

 まずマイナス点としては、「サメが現れて人々を襲う」というサメ映画の基本線が本作では採用されていない。サメ映画ジャンルは互いの頭の悪さを競うかのようにバカげたワンアイデアで戦っているが、それでも「サメが現れて人々を襲う」というモンスターパニック物の補助線が基底にあるため、サメがビーチに潜ろうが、スーパーマーケットにサメが出ようが、「何を楽しめばよいか」は明確であった。それは初代ウィジャ・シャークでも同じだった。

 一方で本作は「地獄を彷徨うパパを救出する」というプロットとなったため、サメ映画の補助線が使えない。現れたサメが人々を襲って、逃げ惑い、反撃し……という、あの展開が発生しない。地獄でビキニのねーちゃんが踊ってるとサメに襲われて爆発する(きさらぎサメ現象)のだが、これも一体何が起こっていて、誰に感情移入すればよいのかさっぱり分からない。

 つまり、本作は「何を楽しめばよいか」がしばらく迷子になってしまう映画なのだ。「地獄を彷徨うパパを救出する」と上で書いたが、これが判明するのは開始30分後くらいであり、それまでは本当によく分からない。地獄の住人(ビキニねーちゃん)が爆発して死んだところで、われわれはそれを悲しめば良いのか、笑えば良いのかすら分からないのだ。

 これは「サメが現れて人々を襲う」という補助線がいかに偉大であるか、という話だ。先週レビューした『ゼットブル』はその点、本当に巧みだった。小目的を都度設定して、視聴者が何を楽しめばよいかをいちいち明示してくれる本当に親切な映画だった。

 というわけで、その点は明らかにマイナスなのだが、一方で「観客の期待に応えていた」という点ではプラス評価せざるを得ない。というのは、2を見に来る客なんてのは

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