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異様なアハ体験(レビュー:『スイート・マイホーム』)

オススメ度:★★★☆☆

極寒の地・長野県に住むスポーツインストラクターの清沢賢二は、愛する妻と幼い娘のために念願の一軒家を購入する。“まほうの家”と謳われたその住宅の地下には、巨大な暖房設備があり、家全体を温めてくれるという。理想のマイホームを手に入れ、充実を噛みしめながら新居生活をスタートさせた清沢一家。だが、その温かい幸せは、ある不可解な出来事をきっかけに身の毛立つ恐怖へと転じていく。差出人不明の脅迫メール、地下に魅せられる娘、赤ん坊の瞳に映り込んだ「何か」に戦慄する妻、監視の目に怯えて暮らす実家の兄、周囲で起きる関係者たちの変死事件。そして蘇る、賢二の隠された記憶。その「家」には何があるのか、それとも何者かの思惑なのか。最後に一家が辿り着いた驚愕の真相とは?

 面白い作りの作品である。地下室の暖房器具による暖気の循環により、特定の部屋だけでなく家全体、玄関や廊下まで暖かくなる「まほうの家」という設定、そして、極寒の地、長野という設定が「えっ、そんな形で活かされるの!??」と、キョトンとするような笑ってしまうような……驚くような形で効いてくる作品だった。いや、そんな伏線、気付けませんわ……。

 本作で発生するミステリー(連続怪死事件)は被害者の共通項に全く見当が付かず、後半に入るまでずっと「何が起こっているのかさっぱり分からない」感覚を覚え続ける。

 と言っても、これはマイナス評価の「分からない」ではなく、むしろ、謎解きに向けての期待感を高められる、良い「分からない」の方だ。かなり期待感のハードルが高まってしまうので、「これを飛び越えるのは難しいのではないか?」と感じるものの、結果的にはギリギリで飛び越えてくれたとも感じている。

 さて、ここから先はネタバレ抜きには進められないので、以下はネタバレご注意となる。家の中での「誰かに見られている」かのような不穏な空気、何者かの監視を警告する統失っぽい兄貴、そして、関係者たちの不可解な怪死事件、それらの真相は――、

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