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「地球温暖化対策の切り札」と言われた謎の木、スーパーポローニアの今

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1月のことだ。いつものように怪しげな情報を探していた筆者の目に、「スーパーポローニア」なる文字列が飛び込んできた。

一時期持て囃されたものの実在が疑わしく、悪徳商法とされることもあるという。少し調べてみたところ、かつて取り組んだ人々の足跡が廃墟のように残されていた一方、一部は現在も活動していることが分かった。15年ほど前に救世主と言われながら怪しげなビジネスに巻き込まれた謎の木は、今どうなっているのだろうか。

「地球温暖化対策の切り札」と呼ばれた謎の樹木

スーパーポローニアとは、桐の一種と言われる樹木であり、その二酸化炭素吸収力から、2007年に出版された書籍では「温暖化対策最後の切り札」と謳われていた。

この書籍とスーパーポローニアの事業を推進していた企業によれば、下記のような特徴を持ち、CO2の削減と木材利用による経済効果が望めるという。

  • わずか4~6年で直径40cmを超える成木になる(一般的な桐は15~25年)。

  • 伐採した株から再発芽し、それもまた4~6年で成木になる。

  • 杉の木の10倍以上の二酸化炭素吸収力を持つ。

  • 軽い・熱伝導率が低い・乾燥が速いといった特徴を持ち、建材として利用できる。

確かにこれが本当なら、地球温暖化対策としてはなかなか有望に見える。しかしこのスーパーポローニアについて調べていると、何かにつけて影がつきまとう。この木で事業を行っていた会社の幹部が、金商法違反で逮捕されているためだ。

ビジネスを主導していた会社の代表は金商法違反で逮捕

逮捕されたのはスーパーポローニア事業を行っていたSという企業の代表、H氏と関係者2名である。これが報道されたのは2010年で、現在も当時の記事を読むことができる。

この記事によれば、同社は2006年から「スーパーポローニアによる排出権取引と建材ビジネスが可能で、利益が出る」旨説明会を繰り返し、約4万3,000人から約98億円を集めたという。これがファンドに該当すると見られ、関東財務局から指摘を受けたが届け出なかった。
この企業はマルチ商法の手法で「グリーンシップサポーター」と称する会員を約3万人集めていたが、国民生活センターに約400件の苦情が寄せられた結果、特商法違反によって3ヶ月間の業務停止命令も受けている。

書籍に書かれている出自は…

上記の事件は、樹木そのものというよりは、ビジネスのための資金集めの手法でトラブルが起きたように見える。それではスーパーポローニア自体についてはどうだろうか。その出自については先に紹介した書籍の111~114ページに記載されている。H氏の証言部分と、単なる記述の部分があるが、スーパーポローニアに関する情報がほとんど企業Sの周辺にしかない以上、ほぼH氏への取材の結果と考えて良いだろう。下記にそれを要約する。

  • スーパーポローニアは、数種類のポローニア(桐)をかけ合わせたハイブリッド樹木である。

  • とある米国出張の際、H氏は親子二代に渡ってスーパーポローニアを研究してきた「デニス・ビーソン氏」なる人物に出会った。場所はカリフォルニア州のベーカーズフィールド。

  • H氏は感銘を受け、植林事業を思い立った。

この書籍は、他のページに「桐は実はゴマノハクサ科の植物であり、その証拠に内部が空洞になっている」などと書いてあり、内容としてはかなり怪しげなものだ。デニス・ビーソン氏なる人物も存在するのか疑わしい……と筆者は考えていた。

しかし調べてみたところ驚いた。どうやら「早く成長する桐を研究していたデニス・ビーソン氏」は実在したようなのである。

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