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街中に隠され始めた「予言の書」

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隠され始めた「予言の書」

ここ最近、陰謀論やスピリチュアルを観察している人々の間で注目されている現象がある。とある「予言の書」を意図的に「置き忘れる」人達が現れ始めたのである。

この本は、昨年も記事にした『秘密のたからばこ』である。意図的に起き忘れているのは、拾った人に読んでもらうための布教戦略だ。

その著者のブログでは世界の終わりに関する予言の記事があり、下記のような主張が行われている。

  • 2023年7月、ノストラダムスが予言した「恐怖の大王」が降りてくる。その正体はブラックホールである。

  • しかし、神は世界を救う救世主をこの世界に送り込んだ。それが『秘密のたからばこ』の著者である

  • 『秘密のたからばこ』を読んで集まった人々から選抜した者の命を著者が救い、地球を守る秘策を行う。

  • 地球が救われた暁には神の王国であり弥勒の世である理想郷が始まるが、その時までにもポールシフトや超巨大火山噴火、核戦争などで人類の80%は滅ぶ。しかし、著者と避難した人々は生き残り、新しい世界のアダムとイヴとなる

思わぬ展開を迎えていた『秘密のたからばこ』

ノストラダムスの予言を、真面目に主張する人物を令和に目にするとは思わなかったが、前回記事にしてから約1年、『秘密のたからばこ』は予想外の発展を遂げていた。

『秘密のたからばこ』は昨年12月から『新世紀エヴァンゲリオン』との関係を盛んに主張するようになり、その甲斐あってかYoutubeの再生数がかなり伸びている(6万再生を超えているものもある)。

エヴァに便乗しており許し難い

その活動はTiktokにも広がり、こちらもかなり再生されている。

さらに、昨年時点では著者の自演かbotと思われるアカウントしか目に付かなかったが、最近ではそうではないようなアカウントが、特に「秘密のたからばこ発見」タグでは見られた(過去長期間に渡って無関係なツイートをしている、最近同書に出会っている、投稿が定型文ではない、青森・新潟・奈良・熊本など、一人ではカバーできないような範囲に置かれているなど)。

これが布教範囲を拡大した成果だとすれば、その努力は素直に認めたいところではある。とはいえ、布教動画群はアクセスを稼ぐためか、新世紀エヴァンゲリオンの他にもシンプソンズ、チェンソーマンといった作品に便乗しており、ファンとしてはただただ不快だ。

世界の終わりが予定されている2023年7月が近づく中、23年5月末には『完全版』も発売されており、これを受けてその活動はますます活発になっている。

怪文書宝探しゲーム

そんな『秘密のたからばこ』は、メルカリ上では旧版でも2,000円程度で取引されている。これを受けて、ウォッチャーの間では「現実世界を舞台にした宝探しゲームが誕生したのではないか」と話題になった。

布教目的で市中に書籍を隠す行為が、思わぬ形でゲーム性を帯びてしまった形だ。仮にお金にならなかったとしても、ヒントを頼りに現実世界を探索する行為自体に面白さがある。

例えばジオキャッシングというプロジェクトでは、GPSで示された場所に宝箱(キャッシュ)が設置されている(大抵はメモと筆記用具が入った小ぶりの容器である)。地図上の座標が明らかであっても簡単には見つからず、アプリにヒントが記載されている。無事キャッシュを発見したら、入っているメモ帳にメッセージを記入すると共に、アプリにも記録を行う。

キャッシュは日本にも大量に設置されており、筆者もいくつか発見したことがある。また、参加者同士でメッセージをやり取りする機能もある。

秋葉原周辺にはこれだけ隠されている

ジオキャッシングの魅力は、GPSを利用することによって日常世界がゲーム化する感覚にある。これと類似の感覚が(というとジオキャッシングに失礼な気がするが)怪しげな予言の書と組み合わさるとなれば関心を集めるのも納得できる(懐かしのオカルトスレッド、「うひゃひゃ」も彷彿とさせる)。お宝のヒントは、Twitterに眠っているのである。
この注目度を考えれば、むしろ現実世界も巻き込んだゲームを設計してしまったほうが布教にはプラスなようにも思える。

ちなみに、筆者は支持者がばら撒く→拾った人がメルカリで売る→支持者が買い取る→支持者がばら撒くというループが発生しているのではないかと想像したが、メルカリで転売すると支持者に怒られるようだ。

近付く「滅亡の日」

先にも書いた通り、『秘密のたからばこ』では2023年7月に地球が滅亡することになっている。もうすぐ6月も終わろうとしているが、著者と支持者たちは7月滅亡説を信じる姿勢を崩しておらず、むしろ「超選民だけが理解できる」と選民思想を隠さない。果たして7月に地球は滅亡するのか、滅亡しなかった際には何が起きるのか。我々は2020年代の「予言がはずれるとき」を、SNSで目にすることになるのだろうか。

しばらくこの界隈は注目を集め続けそうである。


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