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三浦春馬さんの死と陰謀論

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事務所が自ら否定するまでに膨れ上がった陰謀論

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このnoteでも度々記事を書いている通り、筆者は定期的にTwitterで流れる陰謀論を確認している。数日に一度ほど、陰謀論界隈のインフルエンサーをフォローしているアカウントでTLを眺めているが、よく見られるのはスピリチュアル系の人達や右翼・保守系の人達だ。ところがある時期から、それまでは見られなかったような人達が散見されるようになった。三浦春馬さんをアイコンにしている人々である。

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亡くなった若手俳優をアイコンにしたアカウントが、トランプ元大統領やディープステートといったQアノン陰謀論をつぶやいているのは不思議な光景だ。実は三浦春馬さんの死は陰謀論に結び付けられており、ある時期からこのようなアカウントが次々と現れたのである。膨れ上がった陰謀論の波に事務所が気付き、冒頭の発表に至った。

陰謀論は報道翌日から広まっていた

さて、このような陰謀論はいつから出てきたのだろうか。実は三浦春馬さん死亡報道当日から陰謀論自体は出ていた。陰謀論者は目立つニュースなら何でも陰謀論に結び付けるのだ。

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しかし、今見られるような陰謀論が本格的に広まり始めたのは報道翌日の7月19日からで、冒頭の事務所発表にも記載されていた陰謀論ブログを運営する人物が、繰り返し三浦春馬ファンのアカウントに記事URLの入ったリプライを送りつけている様子が見られる。その内容は「三浦春馬さんはCIAに暗殺された」というもので、死亡報道で動揺しているファンへ偽りの真実を注入しようとする卑劣な行為である。

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他の芸能人の死まで利用する陰謀論者、そして11月の大統領選へ

そして、この陰謀論は9月に入って新たな展開を迎える。9月27日に亡くなった竹内結子さんが、遺作となったコンフィデンスマンJP -プリンセス編-で三浦春馬さんと共演していたことからこの2人が結び付けられ、竹内結子さんまでディープステートやCIAに暗殺されたことになってしまった。

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さらには9月14日に亡くなった芦名星さんまでが陰謀論に取り込まれ、ドラマ「ブラッディ・マンデイ」で共演していたことからここでも三浦春馬さんと結び付けられてしまった。

芦名星

そして11月には陰謀論における一大イベントである米国大統領選が行われ、三浦春馬さんアイコンのアカウントがQアノン系陰謀論をつぶやくTLができあがった。

アクセス数稼ぎのための陰謀論

これらはいずれも陰謀論を発信するブログに掲載されており、陰謀論界隈にはアクセス数稼ぎを狙ってこのような発信を繰り返すブログ群が存在する。陰謀論はカネになるのである。例えば報道翌日から陰謀論を拡散していたアカウントはもともと陰謀論とは無縁のアカウントだったようで、駒崎弘樹氏のNPOを名誉毀損し敗訴している。ところがこのブログを見ると、最近は陰謀論に関する投稿が目立つ。陰謀論を掲載すると手軽にアクセス数を稼げるのではないだろうか。

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例えばYoutubeでは、読売新聞オンラインの記事で「英文法解説から陰謀論に動画テーマを変えたところ再生回数が100倍になった」事例が取り上げられている。再生回数が収入に直結するシステムは、陰謀論を拡散するクリエイターを日々生み出している。

陰謀論で再生急増…「金稼げる」くら替え相次ぐ[虚実のはざま]第2部 作られる「真相」<3>

「都市伝説」の危うさ

以前にも芸能人の不審死について考察する文化は存在していた。例えば2011年に亡くなった上原美優さんがそれである。

ネットで騒がれた上原美優「遺書写真」 漫画家がブログでその真相を暴露

筆者も「遺書」とされる画像を見た記憶がある。当時これは陰謀論というよりは都市伝説として語られていた。今の荒唐無稽な陰謀論や、それを本気で信じる人々を見ていると、あくまで半信半疑で楽しむ都市伝説は浮かび辛い。しかし考えてみれば陰謀論と都市伝説の距離はかなり近く、陰謀論が都市伝説の一部として扱われることもある。思い返せば9.11陰謀論も当時は都市伝説として消費されていたが、今のQアノン(Jアノン)を見ているとこれも信じている人が多い(9.11をきっかけに覚醒めたという人物までいる)。2000年代から第二次都市伝説ブームが起こり、「やりすぎコージー」といった番組で芸人が都市伝説を語るコンテンツが人気になった。これは嘘と分かっていてロマンを楽しめる人にとってはただの娯楽だが、荒唐無稽な陰謀論までそのまま信じてしまう人々にとっては「真実」になってしまう。

「信じるか信じないかはあなた次第です」というフレーズは、実は危険な種を撒いてしまっていたのではないだろうか。

「口裂け女」から「きさらぎ駅」まで―都市伝説の変容から振り返る昭和・平成の日本社会


現代思想

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