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閉店と御礼と

今更ではありますが、つむぐりは2020年3月末をもちまして閉店しました。
これまでお店を大切にしてくださったお客様、ありがとうございました。
全く意図せずコロナ禍のタイミングに沿ったかのように閉店が迫ってしまったため、お世話になった方々全てにご挨拶できなかったこと、ひっそりと閉店を迎えざるを得なかったことは残念ではありました。

閉店理由はサイトでもご案内しているように「賃貸契約終了に伴うもの」です。2020年5月に発生する賃貸契約の更新をしない、すなわち閉店を決めたのは2019年の12月頃でした。

更新をしないと決めた理由は時間の制約と建物に対する不安による主に2つです。

「時間の制約」について、現状として残念ながらお店が本業ではない中で、時間の確保ができる週末にしかお店に立つことができませんでした。お客さんの立場に立って考えれば、やはり開いていないお店には行きづらいでしょうし、行きづらい/行ったのに閉まっていたを繰り返すとその頭の中の選択肢から外れていくことになっていくでしょう。かといって私がお店を開ける日数/時間を増やすことも難しい状況です。自身が良いと思う空間で良いと思うサービスを提供することを本業にしたいと思っていました。しかしこの状態を更に2年続けたとして、劇的に何かを変えない限りこれを本業に変えることは難しいと結論付けたということになります。更新をして更に2年走りながら変えていくより、一度手放して構築し直してみることの方が良いと思いました。

次に「建物に対する不安」ですが、これはお店を始める時点からも感じていたものではあるのです。私が感じていた最も重要なつむぐりの魅力は空間、建物であったと思います。ですが、私の所有している建物ではないので、借り手が建物に魅力を感じていても所有者の意向次第でどうにでもひっくり返る状況にはありました。この時点であの建物自体を建て直す話は全く出ていませんでしたが(但し、私が借りる以前に新たな賃貸物件に建て直す話が出ていたそうですが、それは物件の制約で頓挫したとは聞いていました)、私はその当事者ではないのでそれはいつ出てもおかしくない状況です。
元々空き家としてとても使える状況ではないボロ家だったところを、「好きに直して良いが、建屋に問題があったとしても所有者や管理会社は関知しない」というなかなか厳しい条件付きで、私や協力してくださった方の手を借りながらどうにかお店の形にしたものです。ここ数年、雨量が多い際に2階に雨漏りが発生していて、騙し騙し屋内から補修はしていましたが、木造建築ですので根本的には屋根を直さないことには建物として良い状況とは言えません。その旨を以前に所有者や管理会社に伝えましたが、「契約書の通り」ということで何もしてもらえませんし、今後何かをするつもりとも思えませんでした。そこで戦うこともできたかもしれません。しかし戦うことによって、お店を良くするための何かを得られるとはとても思えませんでした。「せっかく作り上げた空間なのに」という気持ちは当然ありましたが、こうした自分でコントロールできない環境から離れるというのも後押しになりました。

その後5月の契約更新をしないという結論を2020年1月半ばにオーナーに伝えたところ、その報告が「解約通知」ということになったようで3ヶ月後が賃貸契約終了ということになりました。その逆算で閉店が3月末ということになりました。このタイミングが不思議なことに今回のコロナのタイミングと重なり、結果的に同業の方々から「絶妙に良いタイミングだった」と言われましたが、全く意図していない結果ではありました。

振り返ってみて、私が健康を害すか建物が崩壊しない限り、お店はそのまま続けていくことも可能ではありました。ただ仮に賃貸契約を更新し「続ける」という選択肢を取った場合、今の状況では閉店するという判断を至ったのではないかと思います。というのもお店で提供したかった価値は空間、そこで過ごす時間です。ということはお店に来てもらってこその価値です。しかしその迎え入れることも、私自身がお店に行くことも、人の移動を伴うものなので、感染症のリスクを広げるということになってしまいます。更にお店で対策を取る/不特定多数を受け入れることを想像するに、今考えても別の良い形の運営方法が全く想像できません。

結果的に自身で閉店するという判断をし、実行できたことはとても幸せなことでした。お店を始めてから、自身でお店をやることの意味や価値を感じてこれまでに無い充実感を感じていた一方で、「もうやめた方が良いのかも」と思わなかった日はありませんでした。意図せず自身が決めたものではない条件ではなく、自分でその終わりを決められたのは本当に良かったことでした。

お店の最後の日に何人かのお客様にも言いましたが、これは通過点だと思っているのでまた何かを始めたいとは思っています。しかし今の時点でその何かはまだイメージにもなっていません。

今年の区切りということで閉店そのものを振り返ってみました。また数日以内にお店を開けるにあたって当時考えていたことやその実際を振り返ってみたいと思います。ご興味あればお付き合いください。

どうもありがとうございました。そしてまたよろしくお願いします!

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