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シニア起業(三つの壁と三つの気質)

全米で大ヒットした「初めの一歩を踏み出そう」という起業の本に出会い、スモールビジネスには三つの壁と三つの気質があることを知った。
 簡単に言うと、どんなに美味しいピザでも知ってもらうまでが大変で、これが第一の壁。人気がでて注文が殺到すると生産が追い付かず疲弊してしまうという第二の壁。これを乗り越えて事業拡大していくと経営能力という第三の壁にぶつかる。
 また、事業を担う人には夢想家、実務家、職人の三つの気質がありコントロールする必要があるという内容。

知ってもらう壁(第一の壁)

どんな優れた商品やサービスでも、知ってもらわない限りビジネスとしては成り立たない。知ってもらうためにチラシを配布したり、広告を打ったり、SNSで発信したり、クチコミでの評判を待ったりする。
 スモールビジネスでの起業においては、お金も労力もかけられないから、認知してもらえるまでに相当の時間が必要になる。一般的には固定客が付いて黒字になるのには3年かかると言われている。それまでの間はやりくりしながら食いつないでいくことになる。お金が底をつくと辞めざるを得ない。
 これが第一の壁です。

供給能力の壁(第二の壁)

知ってもらう壁を乗り越えて、人気が出て注文が殺到すると、それをこなすために精神力と労力で対処するが、やがて限界が来て心身ともに疲弊し、やがて廃業するか、規模縮小する事になる。
 この第二の壁を乗り越えられずに辞める人が圧倒的に多いそうだ。
 私もメディアやクチコミで知られるようになってきたら、声をかけてもらえることが増えて、生産が追い付かなくなった。定休日や夜間を使い作る時間を捻出し、調理器具を増設し、保存用の冷凍庫を買い増すなどをした。この時供給責任の重さを痛感した。またメーカーが生産設備能力を重視している理由がこの時実感できた。

経営能力の壁(第三の壁)

供給体制を整えて、多店舗展開や海外進出、異業種提携、株式公開など規模が大きくなっていくと、それに比例して組織の整備や人材確保、リスク管理、変化への対応、先見性や判断力なとの経営能力を求められる。急激な拡大に対応が追い付かなくなると事業は行き詰まってしまう。
 これが第三の壁です。
私の場合は銀行勤務時代に企業経営の難しさを知っていたことや、事業構想を作ったときに乗れんわけの手法でいくことを決めていたこと、幸いにしてこの本に出会ったこともあり、第二の壁を認識した時点で生産量を抑え、苦しむことなく対処できた。

夢想家気質


夢を追い、既存事業基盤が固まっていないうちに次々と新しい事業を立ち上げ、事業規模の拡大をして行く事業家気質。そのこと自体が楽しい。関係者に相談せず決めてしまうことが多い。


実務家気質(管理者)


 採算や会計、顧客管理、工程管理、資金繰り、衛生管理、労務管理などさまざまな実務をこなし、実務を運営することに長けている管理者気質。現実に対処するため組織運営や資金手当て、利害関係者との調整、目先の課題解決なとにあたる。


職人気質

自分の作品に誇りを持ち、良いものを作りたい職人気質。材料や品質にこだわり、コストや効率を気にかけない傾向がある。

3人のバランス

夢想家は妄想ともいえる事業の発展を重視するあまり、資金や組織整備など足元の状況を気にせず次々と新規事業に手を付けていく。
 一方実務家は矢継ぎ早にこれらの対応に追われるので、夢想家に待ったをかける。夢想家は自分のやりたいことにブレーキをかけられるので不満が残る。
 職人は良い食材を使って良いものを作りたいが、実務家は採算を考えてコストを下げろと要求するので衝突する。
 一人起業の場合は3つの気質のどれが突出しても事業としては発展しない。自分に不足している部分を補完する人が必要で、その人と折り合いをつけながら運営することになる。3つの気質をうまくコントロールしないとやがて行きづまるという法則。
 私の場合は夢想家タイプで、次々と新しいことに手を着けたい気持ちを、銀行で学んだ管理ノウハウでなんとか抑え、職人技術はパン生地完成に特化して磨き、デコレーションやバリエーションは省いた。主婦で菓子作りが得意な共同運営者が実務と職人を補完してくれたので助かった。
 業務量が増えて、この3つを別々の人が担う場合は、それぞれが自己主張し足を引っ張るので、事業の主体者が全体のバランスをとってコントロールしていく必要がある。

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