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シニア起業は"決意"があればいい。スキルや資源、人脈は後から追いかけてくる

 元銀行員が63歳で米粉パン屋を起業して6年間で得たコツのようなものを、自分の経験した範囲でいくつか書こうと思う。
 起業に際して必要なものは、極論すれば「やると決める」ことだけだと断言できる。そして人のためにやること、誓願を立てること。それさえあればスキルや資源、人脈等々は後から補充される。

やると決める

 やると決めない限り前に進めない。資金が貯まったらとか、資格を取れたらとか、一緒にやってくれる仲間が集まったらとかしているうちは、前に進めない。具体性に欠けるからだ。本気ではないから、何か問題が出てくるとやらない口実を作ってズルズルと先延ばしすることになる。背水の陣で望まない限り成就は難しい。もちろん、やると決意した後に構想を練ったり、仲間に相談したり、必要なスキルを習うなどの準備をするのは必要であり、なにもしないで"棚ぼた"で良いと言っているのではない。
 

資源やスキルは後からついて来る

 決意すると、やるべきことが明確になって、具体的に動き出し、足りないことが見えてくる。足りないことをどうやって補充しようかということに意識が向き、情報が集まり知恵が湧き、友人知人がアドバイスをくれ、必要な人を紹介してくれるようになる。起業に向けて進んでいることが実感できるので、やる気が高まり更に勢いを増す。

ビジョンを描く

 起業の決意をした時点で、起業の動機は明確になっているはずだ。次に目的をはっきりさせる。これが明確でないと目先の流行に手を出したり、壁にぶつかったときにぶれて腰砕けになる恐れがある。
 誰かのためなら頑張れるが、自分のためだけなら途中で口実を作って辞めてしまうことになりかねない。起業当初の動機を思い出し、目指すことを常に意識するためにもビジョンを描き、紙に書いて時々眺めると実現しやすくなる。

自分の棚卸しをする

 自分の得意なことや不得手なこと、過去に経験したことを拾い出し、自分の性格・資質や役割を考えてみる。それによって自分の立ち位置を自覚し、ひとりで始めるのか誰かと組むのか決まってくる。

起業手順を踏む

 何事にも手順があるように起業にも手順がある。思いつきで動くと、店舗に一目惚れして契約した後に、コンセプトと客層のミスマッチや店舗スペースの過不足、多額の改装に悩むことになりかねない。シニア起業は残り時間が少ないので、なるべくやり直しをしないような工夫が必要だ。
 
 最初の手順は家賃を仮に決めること
理由は↓

・〈慣らし運転〉
 試行的にやって様子をみる。そうすることでどこにリスクや課題があるのかがつかめ、対策や市場の動向を把握できる。そうするとどの程度の規模にするのかが見えてくる。その上で、将来の拡張性を加味して決めるという選択肢も検討する。

・〈採算〉
 利益が0となる売上高(損益分岐点売上高)を計算し、まずはその損益分岐点売上高を3年以内に達成する方法を検討する。売上分野別・種類ごとの単価・数量を設定し、損益分岐点売上高が達成可能かを納得するまで検証する。

損益分岐点売上高の説明はこちら↓



・〈小さく始める〉
 最初から本格的な設備投資をしない。様子を見ながら規模の拡大に合わせて少しずつ増やしていく。シニア起業はやり直しがきかないので慎重さが必要だ。

・〈決めごとをしておく〉
 スタート時は考える必要はない項目でも、いずれ直面するであろう課題や事象がある。発生した時にどのように対応するかをあらかじめ決めておくと、迷わずに実行でき、ぶれないで済む。
 私の場合は、借入金・助成金活用はしない、値引きはしない、○○セールはしない、ノウハウは公開する、起業を目指す人には厨房を貸すなど。

・〈3年後の黒字化を目指す〉
 スタート時から黒字になることはほとんどない。なぜなら損益分岐点売上高が確保できないからだ。一般的に起業当初は顧客基盤がないので、売上が立たない。認知されて商品・サービスの価値を認めてもらい、リピートされ、口コミ等で評判になって初めて安定した売上が確保できる。それまでにはおおよそ3年かかる。黒字化するまでの間は赤字となることを覚悟し、そのことで焦ったり悩まないことだ。そして赤字資金の手当てをしておく。

・〈急がない〉
 売上が伸びないからと言ってあれこれ手を着けない。中途半端になるだけでなく、定着化しつつある部門までおろそかになる恐れがある。

仲間を増やす

・〈「やりたいこと」を発信する〉
 理念や目指していることを口に出すことで、賛同する人が応援してくれるようになる。人は言わないと中々わからない。口に出し行動している内に、周りの人が友人知人の紹介を申し出てくるようになる。

・〈出会いが事業を広げる〉
 友人知人から人を紹介されたら、紹介された人に商品の売り込みをしないこと。その人の背後には大勢の大事な友人がいる。そのことを強く意識して誠実に接する。そうすることでその人からまた紹介を受け、人脈連鎖となっていく。人間関係ができたら、自分の持っている知識やスキル、人脈、時には商品・サービスなどを提供する。その際出し惜しみをしないことだ。そしてSNSで近況を把握して適度な距離感を持ち、依存と押し付けのない関係を保つことが大切。また、節目となる時に感謝会を開いて、友人知人と一堂に接する機会を設ける。目指していることの進捗状況を報告すると共に、友人知人同志をつなげる。

「出会が事業を広げる」の記事はこちら↓




・〈主婦と組む〉
  子育て、家事、親の介護などの主婦のスキルは起業に役立つ。週何日でもいいので手伝ってもらうと助かることが多々ある。

主婦業についての記事はこちら↓

知っておくと役立つこと

・〈商品力を磨くのが先決〉
 集客のためにSNSで発信したりコンサルタントに相談したり、商品の見せ方を工夫することも大事だが、商品力が乏しいとせっかく目に留まってもリピートや口コミにつながらず、一過性の売上で終わってしまいザルになる。先ずは商品力を磨くことが先決だ。商品力が優れていれば時間はかかっても必ず日の目を見る。必要としている人のところに届く。売り込むのではなく必要とされるものを提供するというスタンスが、遠回りのようで近道だ。

・〈物事には時期がある〉
 真剣に考え努力しても結果がでないときは時期尚早の場合が多い。一旦保留にして時期を待つ。

・〈閾値を知る〉
 やり始めの時は中々売れないが、辛抱強く繰り返しているとある時点から急に売れ出す臨界点のようなものが訪れる。事象はさまざまだが、いろんなケースで当てはまる。

・〈3つの壁と3人の人格〉
 スモールビジネスを始めると3つの壁にぶつかる。最初は知ってもらう壁。どんなに良い商品・サービスでも知ってもらわない限り売上にはならない。人気がでて注文が殺到すると生産が追い付かなくなり、根性や体力任せで頑張っても限界があり、やがて疲弊して辞めてしまう。これが第2の壁。これを乗り越えて多店舗展開などの事業拡大していくと、経営能力の壁にぶつかる。ほとんどは第2の壁で辞めるか規模縮小に追い込まれる。
 起業はひとりで何でもこなす必要があるが、夢を追う事業家気質、管理を得意とする実務家気質、良いものを作ろうとする職人気質があり、お互いが足を引っ張る関係にある。この相反する気質をうまくコントロールしないと行き詰まる。

・〈やってみないとわからない〉
 どんなに用意周到に計画し、予測を立て、知識を得ても想定し得ないことは多々起こる。そういうものだ。だから面白いとも言える。

まとめ

・起業は決意することで動き出す。決意できれば半分は達成したようなもの。
・起業には手順がある。手順を踏めば取り返しのつかない失敗はしない。
・目の前のひとりに誠実に接することで、出会いが広がり事業が拡大する。
・起業はやってみないとわからないことが多い。気づきと学びの連続である。

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