見出し画像

「マザーズ」(金原ひとみ)〜rap

最初の部分は私の子育て経験と違い過ぎて一旦積読していた。
ユカと涼子と五月という三人のマザーについて書かれていて、小説家だったりモデルだったり、ちょっと特別な子育てが描かれているように思えた。普通の人である涼子も、その煮詰まり方が異常で怖くなった。

しかし、積読を片付けようと読み始め、読み進めるうちに、30年前の私の気持ちがこと細かに蘇ってきた。

ほんのちょっとした小さなことの積み重ねで自分を追い込んでしまったり。

子供が1歳くらいの時だったか、水をコップに注ぐことを覚えた頃、何度も何度も繰り返して遊んでいた。
場所は台所の床の上で、私たちは向かい合って座っていた。
子供がそそぐ水を私がコップで受け止める。
何度か繰り返してから、そろそろやめにしようと思った私は、瞬間的に次のように考えた。考えたというより自然な行動として動いた。コップで受け止めることをやめれば子供も注ぐのをやめるだろう。受け止めるコップがなくなれば、床に水をこぼしてしまうのを避けるために水を注ぐのはやめる。人間ならそう考えるだろうから。
しかしコップをよけても子供は水を注ぎ続けた。
この時に自分の常識や考え方が全く通用しない者と向き合っていることを痛感した。

子育てをすることで努力や工夫で乗り越えられないものがあることを知った。

大切な私の経験。

核家族の今日、初めての子育ては誰にとってもそれは大変な経験だ。子供がなんとか自分の考えで生きていけるようにまで育ってくれたのは奇跡なのかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?