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去りゆく人

LINEをよく見ると、昔の同僚の人が退室していた。退室したってことは、LINEをやめたのか、ブロックされたのか、状況はよくわからないけれど、兎にも角にも、連絡もなく、連絡が付かなくなったってことだ。

でも個人的に、少しだけほっとしている自分がいたりする。なんというか、思考回路が理解できない人だったのだ。そして、その人にかける言葉もなかった。彼女が落ち込んでる時、突然に連絡をもらった時、なんて返していいかわからなくて、何度かオウム返しした。そんな自分の言葉は、相手の望んでいる言葉ではなかったろうし、かといって、その人の望んだ言葉は自分は紡ぎ出せなかったんだろう。

こんな時、昔なら、「なぜ連絡をくれなかったんだろう」とか、「また嫌われてしまったのか」とかすごく落ち込んでいたのだけど、なぜだか、もうそんなふうに思うことはなくて、

「ああ、きっともう会うことはないだろう」

と、ただそれだけを思った。私はその人が、嫌いじゃなかったけれど、好きじゃなかった。なんなら、少しだけ苦手だった。私よりも、一つか、二つ年上のその人は、とにかく家庭を大事にしていた。私は、子供にカップラーメンも食べさせるし、週5日コンビニ弁当を食べさせることもある。

その人は手作りの野菜を作って、お裾分けをしたり、安い八百屋で新鮮な野菜をかったり、とにかく食育や子供の教育面を大事にしていたし、沢山ママ友がいて、自分の趣味の世界があって、なんだか、輝いて見えた。私には見えない彼女の思考が理解できなかった。
私は、教育にも食育にも兎に角興味が持てないし、保育園のママと関わりたくもないし、土日にお友達と遊ぶなんてごめんだ。
良いママじゃないと、誰にも言われていないのに、彼女に会う度に自己嫌悪に陥った。だから、彼女がLINEから居なくなって、私は安堵した自分に気が付いた。

そういえば、娘のつながりで連絡先を交換した人は、ほとんど連絡が取れなくなったし、仕事関係で、連絡先を交換した人も、同窓会で久しぶりに会った人も、いつの間にか連絡が取れなくなっていった。

考えてみれば、友人のみならず、仕事をしている間に、いなくなった元夫を始め、その時々の恋人も、気が付けば私の元を去っていった。レスポンスがないことが不安だったのか、大事にされていないと、言っていた。

人間の気持ちなんて不安定だ。
いつもなくなってく。
だんだんと少しずつずれていく。

昔の後輩や、去っていった彼女や、私よりも短い期間で会社をやめた友人が、私よりも沢山の人と密な交流を持てる事は、彼女達が魅力的だからなんだと、私は思うのだ。

彼女は、私に、あなたは仕事があるから良いじゃないといっていたけれど、私からしたら、皆に愛されるキャラクターのあなたの方がとても羨ましく見えたよって、今なら言ってあげられるのに。