接客の醍醐味
※この記事は 2018.12.14 に公開されたものです。
チリーン
間口180センチの5坪の珈琲焙煎屋のドアが開いて1人の女性が入ってきた。
年の頃は70歳前後かな。
マスクをしているのに、女性はしかめっ面をしているのがよくわかる。
かなりのお疲れの様子だ。
マイナスオーラがダダ漏れである。
さぁ。あなたどんな接客する?
ほらほら、あなた。
自分も眉間にシワが寄ってかなり引き気味ですよ。
私は即❗️ひらめいた❗️
自分の力を試してみよう❗️
さぁ
まずは口角を上げてスタート
『いらっしゃいませ』
女性、重たそうな荷物を持ちながら、フラフラ背中を曲げて進んで来た。
『珈琲飲めるのかしら』
『はい。立ち飲みですが。狭いですけど、良かったら、どうぞ』
前に一度、ご利用いただいている方だ。
『ホットコーヒー一杯ちょうだい』
『今日はエルサルバドル🇸🇻です。酸味ありと、無し、どちらにしますか?』
『なんでも良いわよ。わからないし』
鼻からちょっと息を吸い直し再度口角を少し上げ
『スッキリした浅煎りの酸味のある方にしますね。300円です。』
お代を頂いて珈琲豆を挽く。
豆を挽いた時の香りが店いっぱいに広がる
この店はカウンターを挟んでお客様と私の距離感半端なく近い。
自分のエネルギーを強く日常から保っていないといけないと認識している。
女性は荷物を置きカウンターに頬杖をつくような感じで、お決まり通り、大きなため息をついて、1人ゴトのように話し始めた。
『人って何だか嫌よね。話し聞いてるとねぇ。』
静かにコーヒーをドリップしながら聞いていた。
外は日が暮れるのが早くなって真っ暗。
音楽は小さめにボサノバが流れている。
『何かあったんですね』
『…まぁね…。電話がかかって来て聞きたくないような話しをね…』
女性は詳しくは話しはしない。
これは空間が静かなせいで話しにくいのもあるはずだ。
『電話って顔見えないから気をつけないとなんですよね。そんな経験ありますよ。言葉は人の運命さえ変えてしまう事もありますから。訂正が効かない事もあるしね。』
女性は『えっ』と顔を上げた
『はい。どうぞ。』
と珈琲を差し出した☕️
しばらく私は仕事を進めながら沈黙が続き
女性は少し斜め上を見ながら考え、コーヒーを飲む。
目を見て話してみた。
『綺麗な顔立ちなさってますね。モテたでしょう?』
おだてたワケではない。
本心だ。
『この顔が昔から問題なのよ。目なんて明るいところで見ると…。肌も弱いし。人って見る角度によるのよね。』
ネガティブなお返事には繰り返す質問はしないで話しを変える。
例えばどんな風に問題だったか…なんて突っ込まない。
また少し間を置いて
『もう1店舗座れる店もやっているんですよ。良かったら今度ゆっくり行ってみてくださいね。きっと良い時間過ごせますよ』
少なくとも、お客様に対して良い情報。プラスの情報を。
例えば私の健康法の一つとか、マイナス感じた時の対処の仕方とか、時間がないので短く。
今年の漢字『災』
口は災いのもと。
接客=喋れば良いってもんじゃない。
沈黙の中にも目に見えない何かがあり、そこには耳からの音楽。鼻からの香り。空間って様々なものから成り立っている。
私の言葉が少ない時は仕事があまりに忙しく集中しなくてはならない時と、話しても聞く側に私の言葉が入っていかないだろうと思っている時。
沢山の方の集まりの時は盛り上げ役さんがいる場合はお任せして気を抜きっ放し。とかね。
ちなみに、最初の接客のような事を常にしなくてはいけない業態ではないので、しようと思った時にしかしないというムラもある。
常連さんから、沢山突っ込み入れられそうなんで言い訳しとく。
今年は常連さんとの距離感も、キチンと考えないといけないなぁと反省する事も沢山あった。
良い事は良い。駄目な事は駄目。
私の中ではっきりしている。
命より大事なのはお店と子供。
お店の存続に影響する事はNG。
他のお客様に迷惑かかるお客はご遠慮願う。
おっと。
話がそれちまったぜ。
てやんでえ。
で、その女性。
姿勢良く肌の色が変わってシワが減ってドアを出て行かれました。
『また来るわ』って。
チリーン
ひとまず、これにて一件落着でR
↑
勝手に。
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