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四半世紀ぶりに見た「そして僕は恋をする」(アルノー・デプレシャン監督)

この映画、日本で初めて公開されたのが1997年11月8日。なので、劇場で鑑賞したのは、この年の晩秋から冬にかけてだったはず。あの頃は、劇場でかなりの本数の映画を観ていた。パンフレットを捨てずにとってあった(表紙をこの記事のヘッダーに使った)ことからも、その中でも、かなり印象に残った作品だったことは明らかだ。

主人公はポール・デダリュス、29歳。博士号を取れないまま、ずるずると哲学科講師を続けている。恋人のエステルと、ずるずると付き合い10年。すでに博士号を持つ親友のナタン。その彼女、シルビアにひかれことをきっかけに、エステルと別れようと決心。そこに「不思議ちゃん」のヴァレリーも現れて、ぐだぐだ気味の「四角関係」に…

そんなパリのインテリの、少し刺激的な日常が、セーヌ川左岸・サンジェルマン・デ・プレを舞台に繰り広げられる。日本で確実にヒットする「パリを舞台にした恋愛もの」というツボにはまっていることは間違いのだが、それだけでは語り尽くせない物語としての深さや、面白さ、「どぎつさ」があったからこそ、初見から、四半世紀を経て、また観よううという気になったのだろう。

東京・飯田橋駅から徒歩圏の「アンスティチュ・フランセ」。ここで9月8日〜29日の日程で企画されたアルノー・デプレシャン監督作品の特集上映のうちのひとつだ。会期中、トークイベントもあったが、特集上映に気づいた時は、すでにすべて満員になっていた。日本でのデプレシャン監督の人気はすごい。その始まりが、1997年の「そして僕は恋をする」の劇場公開だったことは間違いない。

緑の多い大邸宅のような雰囲気の建物にある劇場は満席。私のように四半世紀ぶりに再見しようと足を運んだ人も多いと思われた。ポール役を演じたマチュー・アマルリックは57歳。この作品の好演をきっかけにスター俳優の階段をかけあがる。その後、「007/慰めの報酬」では、表の顔であるグリーン・エコロジーNGO代表と、利権をあさり軍事クーデターを支援する闇の顔を演じ分けて話題になった。それと比べると、線の細い弱気な人物を演じるのがぴったりなのだ。

作品自体、30歳前後の男女の群像ドラマであり、四半世紀前に作品にひかれたのも、同世代の話だったということも小さくはないんだろう。ただし今回見ても、必ずしもなつかしさだけではない好ましさを感じた。そう思うのは、人生を長いスパンで見渡した時に強く感じる、30歳前後という年代の一種の輝かしさを今、感じているからなのかも知れない。いずれにせよ、この映画をあの時代に見ていたのは、よかったと思う。

特集上映だけでなく、アルノー・デプレシャン監督の新作、「私の大嫌いな弟へ」も公開されている。Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下などで上映中。


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