リトル・フォレスト、その2。
2020年、未知のウイルスが蔓延し、不安と恐怖が広がる中、色々なものが品薄となった。
マスクや消毒液は言わずもがな、ティッシュペーパーやトイレットペーパーまで品薄となった。
マスクを作るためのミシンも品薄になったりもした。
今思えば、マスクやトイレットペーパーの確保は笑い話のように思えるけど、その時は皆、必死だった。
不要不急という言葉が暴力のように蔓延し、これまでの仕事の仕方や消費スタイルや生活のあり方を(良い意味でも悪い意味でも)考え直すきっかけとなった。
食べ物の大切さに気づき、自分で農作物を育て始めた人も多いのではないかと思う。
ところで、前回の記事のリンク先の最後にも書いたことだが、某新聞社から依頼があり『自粛生活が求められる中、おうち時間で観るのにオススメの映画』というお題で取材があった。(なんで.....)
その時にも、オススメの映画は『リトル・フォレスト』と答えている。
自分で農作物を作り、それを料理して作る。
田舎町で、そもそもソーシャルディスタンスなんて関係ない。
映画リトル・フォレストで描かれる生活は特別なものではなく普通の風景。
むしろ、都会生活に慣れてしまい、外食や出来合いのものを食べている生活の方が異常であることを思い知らされる。
映画『リトル・フォレスト』は自分で食材を育て(あるいは採集し)自分で調理し、食べる。
そんな当たり前の営みを当たり前のようにやってみせる映画だけど、「これって当たり前じゃないよな」と思い知らされる映画だ。
2020年、色々なものが品薄になる中、ほんの一瞬のことだったけど、日本全国のスーパーからインスタントのイースト(ドライイースト)が品薄になるという現象が起こった。
原因は、皆、外出自粛の影響で、外食を控え、買い物を控え、自宅でパンを焼き始めたからだという。
(本当にあった話。『イースト菌 品薄』で調べてみるとわかる)
友人からも相談があった。
ドライイーストを売ってほしい、とか、天然酵母でパンを焼く方法を教えてほしい、とか。
コロナの状況は、何かとてんやわんやしたし、一部パニック状態だったが、その一方で、「食生活を見直すきっかけになれば」と少し嬉しく思うこともあった。
まずは食べること。
そのことの大切さに気づいたことは、不幸中の幸いだったと思う。
過去、自分でもパンを焼いてみようと思い、パンドゥミやバゲットやカンパーニュを作ってみたことがあった。
イースト菌を使って作ったこともあるし、天然酵母を自作して、そこからパンを作ったこともある。
レーズン、バジル、トマト、それぞれ瓶に詰め、はちみつと水を瓶に入れ、密封して放置する。
何日かすると、発酵が進んで気泡が現れる。
(写真はないが、レーズンが一番発酵力が強い)
そこから液体だけを取り出し、それを薄力粉や強力粉の混ぜこんで、違う密封瓶で保存する。
むくむくと膨らんできたら小麦粉を足していく。
これがパンに使える天然酵母のタネになる。
以下、過去に天然酵母で作ったパンたち。
これらの写真はもうだいぶ前に撮ったもの
当時、作ってみてようやく理解できたことがある。
イースト菌や天然酵母から起こした酵母菌の役割だ。
簡単い言うと菌はパン生地の中で糖類を食べ、その代わりガスとエタノールを排出する。
パンが『発酵』することによってパン生地が膨らむのはパン生地の中でガスが発生し、気泡が出るから。
さらにその気泡を含んだまま成形し、オーブンで焼くと、空気が膨張し、無数の穴がパンに生まれる。
パンがスポンジ状になる仕組みはこうである。
説明されるとなんとなく頭では理解できるものの、実際にやってみるとちゃんと『菌が生きて作用している』ことを実感する。
天然酵母を作ってみるとなおさら実感する。
ところで『発酵』と『腐敗』は同じ過程を辿るのにその呼び名に違いがあるのはどういうことかというと、人間が食べられる菌の働きを発酵、人間が食べられない(腹をこわす)菌の働きを腐敗という。
それらのことも、自分でやってみると身にしみて理解することができる。
そして、それらのことを理解してみると、例えばこの世からドライイーストがなくなってしまったとしても、天然酵母の作り方さえ知って入れば、パンは作れる、ということを身をもって経験しておくと、もしかしたらいざという時に役に立つかもしれない。
天然酵母のパンの作り方は今やネットでいくらでも調べられるので、興味を持った人も調べてみてほしい。
映画『リトル・フォレスト』は、コロナを経験したからこそ、観て欲しい映画だ。
そしてこの映画だけでなく、アウトドアなどを通じて『食べる』ことや『育てる』ことや『保存する』ことや『採集する』ことの知識と経験を学習する機会がもっともっと増えていくといい、と思う。
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