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ヤマブドウの謎

ある日、常連様のMさんが近くの自然園で撮った不思議な写真を見せてくれました。

Mさん撮影

これはヤマブドウの葉で、鮮やかな赤い突起物が付いています。
雫のような形でなんだか可愛らしい。
Mさん曰く、「このツブは明らかに葉から生えている状態で、ただ乗っかっているのではない」とのこと。
当店の庭にもヤマブドウが自生しているので、同じものがあるかもしれないと、Mさんと一緒に店の外に出ました。
そして、3本のうちの1本のヤマブドウに同じものを発見。

Mさん:「じゃあ、撮影したものが特別ってわけでもないんだね。実はこの赤いツブ、一つ食べてみたんだよ。どうせヤマブドウの葉だし、毒はないだろうと思って。特に味はしなかったけど」
わたし:「ええっ?! 食べたんですか? チャレンジャーだなあ。とにかく調べてみましょう」

そう言って、さっそく検索を始めたわたし。

わたし:「『ヤマブドウの葉』『赤い』で出るかな……あっ、ありましたよ! 読みますね。えーと、『赤い突起物は、虫えい(虫こぶ)の一種……』」
Mさん:「えっ? 虫?」
わたし:「えっと……。『ブドウトックリタマバエ』の……幼虫が……寄生してできる………」(声が小さくなっていくわたし)
Mさん:「ええっ?! ハエ?! ……ハチじゃなくて?」
わたし:「……。い、いや、ハエもハチも同じようなものですよ……」
Mさん:「俺、食べちゃったな……」
わたし:「いやぁー、別に毒じゃないんだし、蜂の子だって信州では珍味ですし……」
Mさん:「でも、ハチじゃなくて、ハエなんだよね?」
わたし:「……」
(検索画面に『虫こぶの中のブドウトックリタマバエの幼虫(ウジ)』と記載されている部分を読めずにいるわたし)

ハチであればまだいい、というMさんの気持ちはわかります。
大きな違いのような、たいして違わないような。
幼虫の呼び名の影響力がこれほどすさまじい「ハエ」という昆虫の威力をあらためて思い知ります。
でもどうってことない……と、思う……いや、どうか。
むしろ、Mさんのその冒険心、天晴。


寄生されたヤマブドウがどういう仕組みで赤い突起物を作るのか、その理由はまだ謎が多いそうです。
森の中は、人間にはわからない神秘的でユニークなことがいっぱい。

ちなみにMさんはその後お変わりなく、元気にご来店されています。
森の中のカフェを訪れるお客様も、ユニークな方が多い気がしている秋のはじめです。


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