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考えるカフェオレ

小学校の頃、学級会などで意見を求められると、「今考えている途中でーす」と毎回言う男子がいました。
それを聞くたびに、ちょっとイラっとしていた子供時代のわたしは、正義感が強くて、理屈っぽくて、常に正しさを求めるウザい小学生でした。

でも大人になった現在、「今考えている途中です」は、なんて素晴らしい受け答えだろうと思っています。

大人になってから、とくに店を始めてからのわたしは、人の意見についつい流されがち。
子供の頃と違って言いたいことを自由に言える状況ばかりではないし、店に立っていろんな人と接して話を聞くうちに、たいていの意見に「たしかにそれもごもっともかも」と思うようになりました。
たとえ明らかに自分と異なる意見でも、立場が違えば見方も変わってくるだろう、なんてことも考えたりするし、もしも生まれ育った時代や環境が違ったならば、今の自分と違う考えになる可能性もあるのだろうと思ったりします。

そもそも、わたしもあなたも世の中も、今の価値観がずっと永遠に続く確証もありません。
ちょっと前に「白」と言っていた人が、数年後に平然と「黒」と言ったりするのを見るにつけ、その思いを強くする日々。
世の中、白黒ハッキリキッパリ分けられません。何が「正しい」のかは、場所も時代も超えて変わります。
「グレー」の中にも「白よりのグレー」「黒よりのグレー」等、あらゆる濃さがあるはずで、それが一人一人日々変わっているんだから、人生なんてずっと「考えている途中」です。

最近お若いお客様を中心にカフェオレのオーダーが多いので、白いミルクと黒い珈琲でカフェオレを作りながら、そんなことを考えてしまうこの頃。
ちなみに、「カフェラテ」とオーダーされるお客様が多いのですが、「カフェオレ」と「カフェラテ」はフランス語とイタリア語という違いの他にも、ベースとなる珈琲の種類など微妙な違いがあります。
カフェオレはドリップ珈琲とミルクを1:1の割合で淹れたもので、カフェラテはエスプレッソとたっぷりのスチームドミルク(蒸気で温めたミルク)で作ったもの。
当店には「カフェオレ」しかありませんが、「カフェラテ」とオーダーされても黙って「カフェオレ」を提供しております。
「正しい」名称も作り方もあるかもしれないけれど、「楽しく美味しく」飲めたらいいですね。

「正しさ」も大事なことだけれど、楽しく美味しい日々を送りたいと思う高原の緑の季節です。

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