コーヒー焙煎度の表記、ライト~イタリアンの8段階表記と、浅煎り・深煎り等の日本語表記の対応を調べてみた

コーヒーの焙煎度の表記、よく見るのはライト~イタリアンの8段階表記と浅煎り・中煎り・中深煎り・深煎り等の日本語表記です。この8段階表記と日本語表記の対応、お店や人によって結構差がある印象があります(明確な基準が有るわけではないので、別に悪いことではない)

じゃぁ実際どれくらい差があるのか?興味がわいたのでコーヒー関連本でそれぞれどのように対応されているか調べてみました。

結果からいいますと、ライト、シナモン、ミディアム、ハイ、シティ、フルシティ、フレンチ、イタリアンに対して、それぞれ浅煎り、浅煎り、中煎り、中煎り、中煎り、深煎り、深煎り、深煎りという表記が最多でした(私が今回確認した本を集計したらたまたまこれが最多になった、というだけの話で、これが正しいとかそういう話ではないです)

結果は上記で終了なんですが、調べていると色々面白いことがあったので、以下につらつらと書いて行きます。

調べたのはたまたま手元にあった本と、近所の図書館にあったコーヒー関連本35冊。うち27冊で8段階表記と日本語表記の対応についての記載を確認。さらにそのうち21冊で8段階と日本語表記の1段階ずつの明確な対応を確認しました。それが表1です。

表1 対応の明確な記載があった21冊

表1から、著者が重複しているものを削除して…と思ったのですが、確認してみると意外と同じ著者でも記載が違うパターンがありました。出版年、共著者、著者であるか監修者であるか等が原因と思います。極端な例ではNo17の『コーヒー抽出の法則(田口護 山田康一・2019)』では同一書籍内の表と本文中で記載がぶれています。著者が2名いるのが原因でしょうか?とりあえず今回は、「著者が同じで記載も同じ」パターンをカウントしないことにしました(上記の黄色)

カウントした結果がこちら表2。色付きがそれぞれの段階の最多です。

表2 記載の対応をカウント

それぞれ見ていきます。

■ライトロースト
浅煎り14/19 その他5/19
 当たり前ですが浅煎りが最多でした。その他5冊も「極浅煎り」3件「最も浅い」2件など最も浅い煎りである事を強調するパターンで、100%浅煎りといって良い表記でした。当たり前ですが(二回目)

■シナモンロースト
浅煎り18/19 その他1/19
 19冊中18冊が浅煎りと、今回最も表記が一致した焙煎度でした。ただ、その他の1冊は「エチオピア」という表記でした。焙煎度で「エチオピア」と言うのは初めて聞きました。かなり浅煎りのコーヒーを煮出して、スパイスをいれる飲み方があると聞いたことがあります。その関係なんでしょうか?でもあれはエチオピアの飲み方ではなかったような。別にまた調べてみたいと思います。

■ミディアムロースト
浅煎り6/19 中煎り 13/19
 最多は中煎り。その他がなかった唯一の焙煎度です。割合でいうと、浅煎り31.6% 中煎り68.4%でした。実は以前、ツイッターで「ミディアムローストは何煎りと思いますか?」とアンケートしたことがあります。そのアンケートの結果は、浅煎り27.7% 中煎り61.7% 中深煎り10.6%でした。浅煎りが3割前後、中煎りが60~70%と傾向は似ています。なんか嬉しい 笑

■ハイロースト
中煎り14/19 中深煎り3/19 その他2/19
最多は中煎り。ここで浅煎り表記はなくなりました。中煎り表記が大部分ですが、その他2冊は「深い中煎り」という表記だったので、中深煎りに含めてもよいかもしれません。それでも中煎りが最多は変わらないですね。個人的に中煎りと言われてイメージする焙煎度です。

■シティロースト
中煎り8/19 中深煎り6/19 深煎り4/19 その他1/19
 最多は中煎り。ただかなり僅差。今回もっとも表記がばらけた焙煎度です。その他1件は「浅い深煎り」表記だったので深煎りに含めてもよいかも。ますます僅差になりますね。現在かなり一般的な焙煎度ですので、そのへんがバラけた理由?

■フルシティロースト
中深煎り7/19 深煎り7/19 その他5/19
 中深煎りと深煎りが同数。ここで中煎り表記はなくなりました。その他5件は「極深煎り」が3件、「中くらいの深煎り」が2件と深煎り寄りでしたので、強いて言えば最多は深煎りでしょうか。ただここで「極深煎り」をつかってしまって、まだあと2段階あるのにどうするのでしょう?答えはすぐ下に!

■フレンチロースト
深煎り16/19 その他3/19 
最多は当然の如く深煎り。その他3件はフルシティローストを「極深煎り」としていた3冊で、「フランス風」(1冊はそのままフレンチロースト)でした。ということでフルシティのときの答えは「国名をつかう」でした(引っ張るほどの事ではない)

■イタリアンロースト
深煎り16/19 その他3/19 
最多は当然の如く深煎り。その他3件はフルシティローストを「極深煎り」としていた3冊で「イタリア風」(1冊はそのままイタリアンロースト)でした(ほぼコピペ)

以上です。あとちょっと面白いなと思った物を。

基本的にどの本も、ライト→イタリアンと進むにつれて日本語表記も浅煎り→深煎りと進んでいきます。その中でNo12の『コーヒー語事典(山本加奈子,2015)』のみ、ハイローストが「深い中煎り」、シティローストが「中煎り」と逆転しています。一覧になっていると違和感を感じるところですが、この本は辞書の様に50音順に並んだコーヒー関連の単語を検索して、その単語について解説する、という形式をとっているので、それぞれ独立してみると違和感はありません。シティロースト以外は、『コーヒーの教科書(堀口俊英,2010)』を参考にしていると思われます(対応の表記が一致・巻末の参考文献リストにも載っている)。そして、シティローストはそれによらず、「日本でもっとも一般的なロースト」と解説したため、「中煎り」という表記になったのかな、と思います。想像ですが。

『コーヒーの科学(旦部幸博,2016)』では8段階と日本語の表記の対応について(1970~ 田口ほか)となっています。この”田口”はまず間違いなく田口護氏だと思いますが、他の田口氏の著作に完全に一致する表記の物はありません。「ほか」となっているので当たり前かもしれませんが、ただ今回確認したもっとも古い田口氏の著作は2003年の物なので、以前は違ったのかもしれません(『コーヒーの科学』で挙げられている参考文献は1987年のもの)機会があれば確認してみたいなと思います

2023/1/21追記:上記の件、参考文献としてあげられていた、『自家焙煎技術講座(柄沢 和雄、田口 護,1987)』では「ライト~イタリアンを1°~8°の度数で表す店舗もある(要約)」といった解説で、浅煎り・深煎り等との対応の記載はありませんでした。同じく参考文献であがっている『珈琲、味をみがく (星田 宏司ほか,1989)』ではライトローストから「最も浅煎り、浅煎り、普通煎りの浅め、普通煎りのやや深め、普通煎りの深め、やや深煎り、深煎り、最も深煎り」の記載で、こちらも一致しませんでした。

フルシティを「極深煎り」として、フレンチ・イタリアンをそれぞれ国名で呼ぶ派。今まで私はあまり意識していなかったパターンです。が、19冊のうち3冊ありましたので、実は結構一般的なのかも……今後ちょっと意識して確認したい部分です。あと国名で言えばシナモンロースト=エチオピアもですね。

こんなところでしょうか。ほとんどは一度読んだことのあるはずの本でしたが、テーマをもってまた読むと、以前気づかなかったことに気づいたりして楽しいですね。またなにか気になることがあったら、調べてみようと思います。

(しつこいようですが、今回調べたのはあくまで好奇心からで、〇〇ローストは✕✕煎りが正しい、△△は間違ってるとかそんな話ではありません。念のため)


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