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Tグループによる職場活性化の方法 (1981年)

主に職場組織に対して実施した著者のTグループ(通称:ファミリートレーニング)体験に関する本。Tグループにおける参加者の変化の記録や、ファミリーグループを導入した企業担当者との対談、Tグループを実施したアシスタントの寄稿、Tグループの予後効果の追跡がまとめられている。

特にTグループのプロセスについてはある参加者の変容を題材に詳しく書かれており、Tグループの投企と変容のプロセスについて詳しく述べられている。Tグループでは実際にどのような事が行われるのか、メンバーの様子やトレーナーの介入が具体的に記述されており、いわゆるチェンジ体験がどのようなプロセスで起こるのか言葉にされている数少ない書籍だと思う。

また、第八章予後効果を追跡するでは、Tグループの予後調査より相関分析を実施しており、その中で特にTグループで得られる効果が述べられている。Tグループとは何かを説明するとき、Tグループの体験や効果がうまく説明するのは難しいが、とても分かりやすい記述であったので以下に紹介する。

『さて、「Tグループに魅力を感じる」とは、結論するならば、Tグループを苦痛に満ちた学習と感じるのではなく、T体験により、不必要な堅い自我防衛規制がとれ、こころが、”世界に向けて開かれた”ことに対する爽快感の表明にほかならない。
~中略~
したがって、不必要に堅い自我防衛規制を取り去ることは性格そのものを変容するもととなるだろう。
~中略~
しかし、とかく自己の殻にとじこもろうとする自分を、外に投げだすことには、たいへんな勇気と力を必要とするにちがいない。したがって、それだけの力を出すためには、それにふさわしい「場」を必要とするのである。その「場」がTグループの「受容」の場である。』

「自己受容」は「自己認知」への第一歩であり、自己受容に対するメンバー間でのやり取りが繰り返されることで自己認知が深まっていく。グループの投企と受容の関係が成就すると完全に自分の殻を脱ぎ去るとともに自由を得て心から体験することになる。この結果Tグループに魅力を感じることとなり自己の特性を体験を通して認知する。Tグループを体験していない人からすると集団催眠などと揶揄されることもあるが、体験者にとっては自己の体験によるものであり、対人関係においても純粋な感情を通しての接触となるので、理解や信頼感も向上する。
これらの体験をするには、1日や2日の短期間や、通いによる体験の分断などではなくやはり文化的孤島に身を置き5泊6日程度の時間が必要となる。

パーソナリティの変化についても述べられており、たとえ自己の特性認知や投企を経なくても共感的理解の向上、無力性自己不安の減少、共感性や信頼感の向上につながり、自己の特性認知レベルが向上し、他者に対する積極性をも向上する。

これらは私自身のTグループ体験やその後時間が経て自分自身が変化したことを振り返っても納得のいくものである。

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