CAEエンジニアは設計者からの興味本位の解析にどう対処するのか

CAEを外部で行っているベンダーやコンサルからすると、このような興味本位の解析依頼をするクライアントはカモなのでやさしい言葉をかけてたくさんの解析水準を提示して行ってくれることだろう。特にメーカーの解析専任部署に断られた理由を理解できぬまま、それでも切羽詰まっていてとりあえず何でもいいから解析結果が欲しい依頼者からするとお金さえ払えば優しく応えてくれる外部業者は神みたいな存在なのだと思う。

メーカー内部の解析専任部署からしたらたまったものではないが、独立採算制で依頼部署が独自に予算を持っていれば、たとえそれが金をドブに捨てるような無駄で意味のない解析であったとしても止めることはできない。その場合CAEエンジニアは、外部に相談される前にコミュニケーションが取れていないことを振り返り、マイナス状態の依頼者との関係性を改善することに努めることが必要である。

それではCAEエンジニアは、設計者から興味本位の解析依頼をされたときにどうするのか。CAE エンジニアからするとやるだけ時間の無駄だったり、わかりきった答えしか出ない解析依頼に対してどのように対処するとよいのか。自分は、
・まずは興味本位の解析に徹底的に付き合って解析を行う
・その中から依頼者が気づいていない真の課題にアプローチする
というように対応している。

解析依頼があるということは少なくとも依頼者の顕在化したニーズがそこにある。CAEエンジニアからするとその顕在化したニーズはCAEである必要がないかもしれないし、依頼者の興味本位に感じたりただの下請け作業に感じるかもしれない。しかし、その顕在化したニーズを一旦は受け取り聞き入れることから相手との関係性が構築される。依頼者もこちらとの関係ができていなければ真の課題を相談することもできないし、CAEエンジニアが本来アプローチする課題についても掘り下げることができなかったり、そもそもこちらの主張を聞き入れられることもない。そのため、まずは関係構築のために興味本位の解析を受ける。そして解析結果を返す時は単に言われた解析結果だけを返すだけではなく、次から興味本位の解析を依頼されないようにその興味本位の背景にアプローチした提案や検討を付加する。場合によっては依頼者を教育し、可能な限り依頼者の潜在化しているニーズに気づけるようにしたり、CAEエンジニアが本来アプローチすべき利益に寄与する課題やその興味本位の背後にある潜在化しているニーズにアプローチする。ポイントは、依頼者が興味本位の解析を依頼するーCAEエンジニアは解析を依頼される、という主従関係から、双方向にモノづくりに対して意見し合う対等な関係に変化させることである。

とはいってもなかなか相手を教育したり、相手を変化させたり、潜在ニーズにアプローチするのは難しい。これまでの個人的な経験や感覚では興味本位の解析の10回に1回くらいは潜在ニーズにアプローチできて、またそのうちの10回に1回くらいが利益に寄与することができる。要は100回くらい興味本位の解析に付き合って初めて1本の利益の上がるテーマが見つかるかなという感じ。逆に言えば興味本位の依頼解析を数多く受けることが、CAEエンジニアとして利益の上がるテーマに早くたどり着くことにつながる。

CAEエンジニアとしてメーカー内部で働いていても、いくら現場を毎日見て回っていても、直接の当事者として日々設計や製造を行っている人からすると見えている世界が違うと実感させられる。如何に相手の現実に立つか、相手の見ている現実を見るか、それを探るにはまずは相手の興味本位の解析に取り組むことに尽きるのではないか。

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