キャンピングカーの熱設計について考える

昨今コロナもありキャンピングカーブームになっている。各地で開催されるキャンピングカーショー等の展示会は盛況である。
そのためか20年前から比べるとキャンピングカーの車種は増え、ビルダーも乱立している状況である。それは構造変更を伴わないキャンピングカー仕様、車中泊仕様の車は単に家具や電装品等を荷物として載せるだけであり、車そのものに手を入れて改造するわけではないので、参入障壁が低い。そのため、これまで自動車整備を行っていた町の自動車整備会社などの小規模事業者や家具メーカーでも簡単に参入できるためであると思われる。サブバッテリーもリチウムイオンバッテリーやポータブルバッテリー等単品でも比較的安価で安全なものが出回っており、個人でも購入可能となっているのも大きい。そのため、少しの車知識と電装品知識があれば、パーツを組み合わせるだけでキャンピングカーができるのである。

ここで問題だと思うのは、特に電装品において、パーツを組み合わせればキャンピングカーとしての電装関係がアセンブリできてしまうがゆえに、熱設計を考えていないと思われるようなものが多いのではないかということである。特に軽キャンパーやミニバンコンは狭い空間の中に電装品を配置しなければならず、また居住性の観点では家具等を配置しフルフラットにするために隙間や座席下などの狭いスペースに電装品が押しやられている。
大抵の電装品は熱に弱いため、単体仕様においてはある程度放熱設計がなされている。それは各電装品メーカーの設計の結晶である。もちろんそれは車単体においても同様である。しかし電装品を組み合わせ、キャンピングカーの電装品としてアセンブリした際に、それぞれの電装品の配置は密集し家具内に閉じ込められることになる。その際には放熱、排熱設計が重要になる。多くのキャンピングカーはこの密集した家具内に電装品を配置してはいるものの熱設計が十分ではないように思われる。明らかに排熱のための通気口やファンが足りないと思われる。
これはワークステーション等の筐体PCと比較すれば一目瞭然で、筐体PCでは発熱する部品に対して多くのファンや通気口で熱を効率よく逃がす設計がなされている。電子部品が熱に弱く、常に冷却していなければ本来の性能と寿命を満足できないからである。また、電装品そのものからの熱もあるが、それ以上に車は苛酷な環境に置かれる。夏の車内は60度以上、真冬は氷点下になる。加えて振動も大きい。車内が快適な温度になっていたとしても家具内の電装品は家具の断熱性の影響でどちらかと言えば車外の環境に近くなる。このような電装品が置かれる状況をきちんと把握し、そのうえで電装品設計がなされているものは少ないように思われる。

今、キャンピングカーがブームであり参入障壁も低い業界で、もし劣悪な環境に置かれた電装品が出回っているとすると、今目先はブームで売れるかもしれないが、本来の性能と寿命を発揮できず数年で故障、修理が頻発することになるのではないか。そうなるとメーカーの信頼性、キャンピングカーの信頼性や将来性に関わるのではないかと危惧する。もちろんビルダーは売ってしまえばそれでよいかもしれないし、寿命をあえて短くし故障したら修理のためにまた儲かるという仕組みとして考えているのかもしれない。しかし、長く使えると思っていたユーザーからするとどう思うだろうか。多くのユーザーは熱設計など知らない。もし頻繁に壊れる電装品を持つキャンピングカーに長く乗りたいと思うだろうか。

キャンピングカーオナーとして、これが私の杞憂であることを願う。
もし熱設計についてのご相談があれば連絡ください。


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