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JUNK HEAD 震え 2022/03/07

映画「JUNK HEAD」を見た。今日はその感想と……いうよりは見た後に自分が感じたことを書く。

いわゆる"ストップモーションアニメ"という奴で、簡単に言えばピングーを100倍スケールアップしてSFと人型異形種とグロテスククリーチャーとバトルアクションとディストピアとちょっぴりのギャグを混ぜて整えたという作品だ。細かい話はしないというかできないというか、グロテスクな表現に抵抗が無ければ見てくれればそれが一番早いという作品である。端的に言ってしまえば、「面白い」の一言だ。

そして確かに面白い作品ではあるのだが、世界観が非常に独特なため100分間のこの映像を見続けるのが「疲れる」というのは間違いない。なのでこれを視聴する際は元気のあるときにしてほしい。しかし……"すごい"作品であることは間違いない。こういった"不気味さ"が好きなのであれば、全く後悔はしないだろう。

さて……そしてこの作品の話をする上で、外せないのは「この作品を撮るために、監督がほぼ一人で7年間かけた」という事実だろう。元々は短編版が存在しそちらを監督一人で制作・撮影した後に3年かけて長編版をチームで制作したというらしいが、いずれにせよものスゴイ執念と継続力で撮られた作品ということは間違いない。

ひとつ聞いた話によると、ストップモーションアニメは1秒間の映像を撮るのに映像撮影だけで50分もの時間がかかるらしい。それを積み重ねて1時間40分もの映像を完成させるのは、これはリスペクトを持って言わせてもらうが狂気の沙汰というしかない。

本編を見てもらえればわかるが、この作品はいわゆる「万人受け」する作品ではない。理解が難しい世界観、不気味なキャラクター、残酷な展開と、楽しめる人の割合は50%に満たないのではないかと思うくらいだ。しかしそういった作品を完成させるのに必要なのは「作り手のエゴ」であり、それがこの作品では余りあるほどに感じることができた。

言ってしまえば、私はこの作品を見て"落ち込んだ"。いや、面白かったので作品を楽しんだのは間違いないのだが、一人の人間が継続してコンテンツ制作に当たりこういった"超すごい"作品を完成させるという事実を目の当たりにすることで、「自分にはできないことをやっている奴がいる」と感じて恐怖に震えあがり落ち込むのだ。他人のすごさを見て、自分の矮小さに気付いて凹んでしまう。我ながら弱い性質だとも思う。

何かひとつの作品を膨大な期間をかけて作り続ける……それはクリエイターとして本当に憧れる理想のひとつだ。"すごいコンテンツ"を作り上げるには"すごい時間"がかかるという単純な事実を、まざまざと見せつけられたのである。

しかもこれは、三部作の第一部らしい。第一部を制作するのに7年かかるということは……完結するのに何年かかるんだ? しかし、それをこの監督はいつかやりとげるだろうという降伏にも似た信頼がある。

別に私は映画監督になりたいというわけではない。なので他にもこういった「落ち込む衝撃」を食らわされるコンテンツは映画以外にもときどきある。しかしそれはつまり面白い…………もっと幼稚な言葉を使うなら"負けた"と思わされる作品に会っているということで、それ自体は嬉しくもある。変なマゾヒズムにも似た感傷……これは何か言葉のついた心理状態なのだろうか? 少なくとも、良い刺激だと思いたい。

取り留めのない日記になってしまったが、たまにはこういうのもいいだろう。今日はここまでとする。


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