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楽器を再開してみた

かつてトロンボーンを演奏していた。中高は吹奏楽部に、大学ではオーケストラサークルに所属していた。高校までは学校が所有する楽器を使えたが、大学のサークルとなると話は違う。一般的に備品の楽器など存在しない。私はどうしてもお金を貸してほしいと3ヶ月かけて父を説得し、ようやく購入した楽器を携えてオーケストラの門戸を叩いた。

寝ても醒めても音楽のことを考え楽器を演奏し続けていたが、オケを離れてからはめっきり5年も吹いていない。時折楽器を持ち出して河川敷で吹いてみたり、カラオケで音出しをしてみることはあっても、まとまった時間を設けて定期的に練習する習慣をすっかり失っていた。

演奏活動を再開したいと幾度も思っているが、まだ当分先のことになりそうである。転職して間もない。入社して1年間は仕事に集中したいこともあったし、入社後しばらくは疲れをとるために土日には休息が必要だろうと考えたためだ。

しかし、ふと不安になる。「もしかして音すら出せなくなってしまっているのではないか」。そんな不安を抱いてしまっては落ち着かない。土日はなんとかカラオケに駆け込もうと考えた。

いざ、カラオケへ。

先日のカラオケには大きく2つの目的があった。1つ目は、今でも音を出せるか確認することである。2つ目は、カラオケ料金の相場を知ることであった。

実際に吹いてみるとちゃんと音は出た。しかし、音程がボロボロだった。チューナーで音を確認してみるとB♭でマイナス30セントもズレている始末である。声だけでも音程感を取り戻そうとしたが戻らない。失った音程感を取り戻すのは一朝一夕には叶わないと覚悟した。5年のブランクは大きい。

先日はちょっとした音出しが目的だったためカラオケの部屋は1時間しか申し出ていなかった。私は人生で最も集中した練習時間をすごした。メニューはいたってシンプルである。下のB♭から1オクターブ上まで、60分間ただロングトーンをした。それ以上でもそれ以下でもなく、1オクターブの音階のみを吹いた。リップスラーやタンギングは後回しである。60分間、集中してアンブシュアを確認した。

しばらく吹いていると体が温まったからか音色はマシになった。それでもやはり、体力と、ブレスと、音程が酷い。いずれアマオケに参加したいのであれば、今からコツコツリハビリする必要がある。

片付けをしていたらいつの間にか時間延長してしまったため、最後の30分は3曲ほど歌って帰った。ドリンクバー込み90分間で1,200円。思ったよりも安い。これなら毎週通っても練習できそうだ。次の土日が楽しみである。

焦りや不安の大きい音出しだったが、やはり楽器は楽しい。前職はアマオケに全く参加できない労働環境だった。アマオケに参加したいという思いもあって転職活動をしていた。仕事が手につくまで1年ほどは演奏団体に入るつもりはないが、着々と準備が開始されている状況を私は嬉しく思う。先日は第1回リハビリ記念日。大事に楽器を携えていたかつての私と同じように、来年の今頃はどこかのオケの門戸を叩きたい。

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