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第三帝国の誕生 第13夜~マイン・フューラー~(最終夜)

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第三帝国の誕生 第13夜~マイン・フューラー~

■オーストリア問題----00:00:07

[TIME]----00:00:07 ドルフース暗殺
【N】「長いナイフの夜」を経て、一線を越えてしまったという話をしましたが──。ここでまた国外。外交情勢ですね。
【D】はい。
【N】久々に国外に目を向けると、「長いナイフの夜」からほどなくして、お隣オーストリアで大事件が起きた。
【D】うん。
【N】オーストリアの首相であるエンゲルベルト・ドルフースが暗殺されてクーデターが発生した。
【D】ふーん……。オーストリアって大統領? 首相?
【N】両方いる。まさに今、説明しようかなと思ったんだけれど──。
【D】ああ……すいませんね(笑)
【N】大丈夫、大丈夫……(笑)──オーストリアはもともと帝国だったんだけれど、ハプスブルグ帝国が崩壊してしまったので共和国になっていた。
 共和国なんで大統領がトップで、その下に首相がいたんだけれども──、この頃は前出のドルフース首相の下、イタリアをお手本とし、かつカトリックを重んじるという「教権的ファシズム体制」をとっていた。
【D】ふーん。「教権的」というのは。
【N】宗教がベースになっている権力体制。
【D】うん。
【N】そういうファシズム体制をとっていて、これを「オーストロファシズム(Austrofaschismus)」という。まあ独裁体制です。
 それを崩壊させようという一揆だったわけ。で、この暗殺を実行したのは、「オーストリア国民社会主義ドイツ労働者党 ヒトラー運動」という組織。
【D】長い……(笑) ──という組織?
【N】うん。「~ヒトラー運動」までがね……(笑)
【D】うんうん。
【N】いわゆる「オーストリア・ナチ党」という組織で、これはナチ党の姉妹党。テオ(テオドール)・ハビヒトというリーダーの下、ナチ党の影響下にあった。弟分・妹分的なものであったと。
【D】ふむふむ。
【N】ヒトラーはドイツとオーストリアの併合を目指していたから、それを実現するためにこのオーストリア・ナチ党を支援していた。
【D】うーん、なるほど。
【N】しかし首相のドルフースが、1933年6月にオーストリア・ナチ党を非合法としたので、ドイツとオーストリアの関係は悪化していた。
【D】うん。

[TIME]----00:02:49 ムッソリーニの牽制
【N】そして、なおかつ厄介なことに、イタリアのムッソリーニがドルフースを支援していた。
【D】あー、はいはい。ムッソリーニね。
【N】さっき、ドルフースはイタリアをお手本としていたと言った。だからイタリアのファシズムにちょっと似ている体制だった。
【D】はいはい。
【N】で、ムッソリーニはオーストリアの独立を支持し、大ドイツ主義による併合というのは認めない立場だった。
【D】あー。なんとなく、ムッソリーニとヒトラーって、仲良かったのかなァって……(笑)。
【N】のちにそういうイメージがつくんだけれど、この時期はまだ仲良しではない。
【D】ああ、そうなんだ。へえ。
【N】──ヒトラーはこの年の6月に、ベネツィアでムッソリーニと会見しているんだけれども、ここではオーストリアの独立を維持するということで合意していた。まあ、表向きね……。しかし裏ではこういうキナ臭い事件が起きている。
【D】うん。
【N】傍目にはドイツの関与の匂いがプンプンするクーデターなわけ。なので、ドルフースとも個人的に親しかったムッソリーニがキレまして、オーストリア国境にイタリア軍を集結させ、ヒトラーに揺さぶりをかける。
【D】うん。
【N】また、イタリア以外、その他の国からも強く非難され、ドイツは孤立してしまう。「お前ら、絶対関与しているよな?」みたいな感じで……(笑)
【D】うん、まあ、そう思うよね。
【N】うん。で、さっきも軽く言ったけれど、ムッソリーニのイタリアといえばファシズム国家であり、のちの日独伊三国同盟があるから仲良しのイメージがあるかもしれないんだけれども、この頃のムッソリーニは基本的にヒトラーを評価も信用もしていなかったようです。
【D】はぁ、そうなんですか。
【N】もうちょっと情勢が変わってから接近する。──ただ、ヒトラーのほうは初期、ムッソリーニに憧れを持っていた。彼がいわゆる「ローマ進軍」を成し遂げたということで、自分たちも同じことをやろう! と言ってミュンヒェン一揆を起こしたわけだから。けれど、この時点ではまだ片思い的なところがあった。
【D】うん。

[TIME]----00:05:06 関知セズ
【N】──ともかく、窮地に立たされたヒトラーは、オーストリアのクーデターとは無関係であると示すために、オーストリア・ナチ党を切り捨てる
【D】おぉ、切り捨てる。
【N】切り捨てる。「知らん」って。
【D】どのように……。
【N】「関係ないです」と。
【D】あ、「ウチとは別で、勝手にやったよ」ってこと?
【N】「勝手にやったことです」「私たちは知りません」みたいな態度をとった。
【D】へえー。

[TIME]----00:05:34 公使パーペン
【N】──そして、オーストリアを巡る一連の外交関係を修復するため、ヒトラーはパーペンをウィーン公使に任命している。パーペンねえ……。
【D】出た。
【N】──命からがらという……(笑)
【D】(笑)
【N】──ヒトラーを権力の座に据え、これを囲い込もうとして一転、命まで落としかけたパーペンだけれど、これ以後は主に公使とか大使として、外交面でヒトラー政権に寄与することになる。ちょっと外向きの仕事に就くようになったと。
【D】ふーん、おとなしくなったんですか?
【N】おとなしくなりましたね。
【D】うん。
【N】そしてオーストリア問題に関しては、1938年3月12日に「アンシュルス(Anschluß)」いわゆるオーストリア併合が成立することになるんだけれども、それはまた別のお話って感じだね。ゆくゆくは併合されてしまうけれど、今回はそこまでのお話ではないので。
【D】はいはい。

■共和国の終焉----00:06:33

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