CAEソフトウェアのバグについて利用者として知っておくべきこと
CAEソフトウェアにもバグは存在します。しかし、有名なソフトウェアであれば、基本的な機能や古くからある機能については、まず問題ありません。多くのユーザーに利用されており、長年のうちにバグは出尽くして解消されていると考えられるからです。
一方で、利用者が少ない特殊な機能や新しく追加された機能には特に注意が必要です。利用実績が乏しいため、まだ明らかになっていないバグが存在する可能性があります。新機能については、急いで導入する必要がなければ、一つバージョンを見送り、機能が安定してから使い始めるのが賢明です。
バグの特定手順
ソフトウェアが問題のある動作をする場合、バグを疑います。多くのソフトウェアベンダーは、登録ユーザに既知のバグのデータベースを公開しており、自分の状況に合致する未修正のバグがあるかどうかをチェックすることができます。合致するものがない場合は、未知のバグの可能性があるため、「不具合」としてテクニカルサポートへの問い合わせることになります。
なお、「バグ」と「不具合」は少し異なる概念です。「バグ」はソフトウェアコードの誤りを指し、ソフトウェアが設計仕様と異なる動作をする原因となります。「不具合」はユーザーの期待に反してソフトウェアが望ましい動作をしない状況を指します。これにはバグだけではなく、動作要件を満たさない環境、採用している理論の限界、ユーザーの主観などの要因も含まれます。「バグ」と「不具合」の使い分けを理解することで、サポートチームとのコミュニケーションがより円滑になります。
問題の再現性は非常に重要です。問い合わせたサポートチームが問題を再現できない場合、調査は事実上不可能です。特に複合的な要因による問題は再現が難しいので、こちらから問題が起こるモデルを送付するとよいです。機密保持のため、実務用のモデルの直接送付は避け、問題を再現できる簡易モデルを提供する方が望ましいです。そのモデルで問題が再現しない場合、ハードウェア、OS、セキュリティソフトウェアなどの利用環境が影響している可能性があることがわかります。
サポートチームの調査の結果、その不具合がバグだと判明した場合には、設定変更などの回避策が提示されることが多いです。バグの修正には時間がかかるためです。また、調査の結果、その不具合がバグではないと判明することもあります。その理由としては、使い方を間違えていることや、手法や機能の適用範囲を超えてしまっていることが挙げられます。
対処の方針
バグは多岐にわたる問題を引き起こす可能性があります。多くのバグはソフトウェアのクラッシュ、意味不明なエラーメッセージ、誤った解析結果の形で現れます。クラッシュやエラーメッセージにはまだ救いがあります。もちろん、やりたいことができないのは大いに困るのですが、現在自分がバグに遭遇していると認識できます。問題となるのは、一見しただけでは分からない誤った解析結果になるバグです。明らかに不自然な結果であれば気づきますが、そうでない場合は、気づかずに誤った解析結果をそのまま利用してしまう恐れがあります。このリスクを軽減するためには、既知のバグのデータベースを定期的にチェックすることが効果的です。特殊な機能や新しい機能を頻繁に使用する場合、念のために既知のバグのデータベースを定期的にチェックしておくことが望ましいです。
バグはないに越したことはありませんが、現実にはバグは存在します。長い目でみればバグは修正されますが、目の前の業務は待ってくれません。不幸にしてバグに遭遇してしまった場合、適切な回避策を講じることが重要です。そのためには自身の解析内容に精通し、近似も含めて必要な結果を複数の手段で得られるようになっておくと役立ちます。