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CAE解析業務におけるAIの活用

現在広く利用されているAI技術を、CAE解析業務においてどのように活用できるかを考えてみます。

モデル作成

CAEのモデル作成においては、精確な条件設定が不可欠です。間違うこともあるAIをすべてのプロセスに適用することは難しいですが、メッシュ作成など柔軟性が許される作業ではAIによる自動化や支援が有効です。また、必要な知識を学習したAIが経験の浅いオペレータを支援することも可能です。これらの支援により、オペレータはより効率的にモデル作成を進めることができます。

計算リソースの有効利用

計算リソースの効率的な配分にもAIは適用できます。例えば、AIを利用して計算ジョブをコンピュータの空き状況に応じて効率良く割り当てることで、全体的な解析業務の時間短縮ができます。また、モデルの形状やその他のパラメータを変更しながら複数の解析を実行し、最適な結果を探索するプロセスにおいてもAIを適用できます。これには実験計画法や勾配法などの数学的手法が用いられていますが、AIを用いることでより効率的に最適解を見つけ出すことができる場合があります。また、複数の解析結果から関連性を見出すことや、特定のモードを抽出する際にもAIは大きな助けになり得ます。

解析結果の予測

時間がかかる数値計算を省略するために、AIによって解析結果の直接予測を目指すアプローチもあります。しかし、この方法には限界があります。既存のデータの範囲内で「内挿」する予測は可能ですが、「外挿」、つまり既存のデータ範囲を超える場合、塑性、接触、座屈、境界層剥離、乱流遷移など、見逃してはならない非線形現象の発生を予測することが難しいためです。類似の解析結果が豊富な場合にはAIは有効ですが、新製品や新領域の解析においてはAIの効果は限定的です。したがって、過去のデータから近似式を作っておき、既存製品の設計変更の影響の見積もりに利用し、候補案が固まったら実際の数値計算をして確認する、従来の応答曲面法の拡張としてAIを利用するのが現実的です。

AI活用の現状と期待

このようにAIはCAE解析に活用できますが、全てのプロセスで効果的であるわけではありません。しかし、注目度が高いこともあり、いま実現可能なことと将来の可能性が混同されることや、限定的な条件下でのみ実現可能なことが一般化されて紹介されることもあります。そのため、適用条件や効果については、正確な情報を得るように心がける必要があります。また、今後は技術の進歩により適用範囲が広がることが期待されます。この記事が早く時代遅れになることを願っています。

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