男に魂を売った女たち

泣きたくなるほど寂しい夜は文字を打つのが正解だろう。

毎度毎度、女は生理前になれば情緒不安定になるし好きな男には依存をするし愛のないセックスで寂しさを埋めようとしては余計に虚しくなったりする。

いわゆる、メンヘラの域ではないだろう。手首を切ってみたり薬を大量に飲んでみたりはしない。ただ人間メンヘラかメンヘラではないかの2種類に綺麗に分けられるものでもない。グラデーションになっていて、多分私はややメンヘラよりだ。5段階評価でいくと3.5〜4くらいのメンヘラだと思う。弱メンヘラと呼ぼう。このレベルでメンヘラを名乗ると本職の方にボコボコにされる。

自分は本当に想像力が豊かで、いらんことばかりを勝手に妄想してはありもしないif物語に浸ってガン泣きする。映画の構成作家もびっくりの急展開。最後の美しい別れの言葉まで妄想したりする。「あなたがわたしのこと大事じゃなくてもずっとすき」いやこれは可哀想なヒロインすぎて頂けない。「結婚するならあなたみたいな人がいいなってずっと思ってたよ。でもきみは違うみたいだね」ちょっと嘘くさい。「あなたが私を信じられなくてもいいけど、付き合ってる間、私は君のことずっと全部信じてるよ。」恩着せがましい。などなど。こういった現実では絶対に発話する機会もないような言葉とシーンを緻密に何度も練っては脳内で4Kも顔負けの高画質で繰り返し再生する。その悲恋映画に人知れず夜な夜な枕をじっとりと濡らし、泣き疲れ、寂しさに襲われ、連絡が返ってこないか何度もLINEを開いては閉じ、諦めて、最終的に自慰でもして4時には寝る。

ずっとこんな感じなのだ。冷静になって「ああアホらしい。相手は何にも考えてないんだから夜中に全米が泣いた悲恋映画を作るな」と何度も自分を律しても、1ヶ月に1回のペースでひょっこりとこのシーズンがきてしまう。普段人と距離を保って接している反動なのか、好きになった相手にとことん心が振り回される。友人から連絡が2〜3日来ないくらいで何も感じない。1週間返ってこなくても急ぎでなければ送ったことさえ忘れているし、自分も返信の必要がないと思えば何日も放置してしまうときさえある。なのにどうなんだ。好きな男から2日ラインが返ってこないだけでこのへこみようだ。ラインの内容もありえないほど深読みする。え、ここの「。」はどういう意味なの?え、このスタンプ何、とか。そんなもんにいちいち意味はないのである。意味はないのに深読みして誤爆。誤爆誤爆誤爆。

自分の感情を大切にしてやりたいが、かなり暴走ぎみで中々相手してやることが難しい。ほぼ暴れ馬だ。適度に距離を取って落ち着くのを待つしかない。私だって乗りこなせないこの暴れ馬を、他人が乗りこなせるわけがないのだ。それなのに、恋人となると何故か期待を寄せて攻め込んでしまう。世は戦国時代なのだろうか。とんだ負け戦である。

人間22年目になり、大人ぶる対応はできるようになった。ごめん、仕事が入って会えなくなった。そっか〜しょうがないね。仕事頑張って!また今度会おうね。…アホか。そんな穏やかな心持ちなわけあるか。前日に連絡してくんなボケカスこの日のために何日パックしてトリートメントしてメイク服考えて爪塗ってヘアアレンジもアクセもあああああ。本心はこんなもんだが仕事がしょうがないことも分かっているし忙しいのも知っている、更には「そんな前日に変わることがあるかよ」と疑うことが何の解決にもならない意味のないことだというのも分かっている。理性と感情がごちゃ混ぜになるが、人間22年目なので理性で返信ができる。これが偉いのか悲しいことなのかは分からないが、人間20年目の初めにはできなかったことなので成長ではあるかもしれない。


まったく、自分をエンタメ化して面白がらなければやってられないな。セックスは自傷行為だとやっと分かった。ではどうやって気を紛らわせたらいいのか。映画を観る。料理を作る。風呂に浸かる。色々するけど中々完璧に気が紛れるものはない。ならばもう、文字にするしかない。男に一生振り回される側の滑稽で可哀想でアホらしい自分を文にして昇華してやる。そうするとその惨めさも、何となく、一つの作品になってまあいいかと思える気がする。普通に生きていてもただ人が私を可哀想だと消費するだけだし、更にはその可哀想な私を見てちゃっかり自分の安寧を得ちゃったりしている。そうやって利用されるくらいなら文にしちまえ。男に魂を売っちゃってる私は、そのくらいで世界に反逆するしかないんだろう。そんなに悲しむなよ。誰かがお前を大切にしなくともお前がお前を大切にするからさ。魂売っちゃった相手が可愛がってくれるかは分からない。けど大丈夫。タイミングがきたらお前はまた前みたいにその売っちゃったはずの魂を男からさらっと奪い返して、何事もなかったかのように次に行っては生活を続けてしまうんだからさ。そういう強かさがあるのが女たちです。

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