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銀座Tビルの記憶 6 [住人]

入居当初、同じ階のテナントさんにはご挨拶をしましたが、ある程度経つと、他の階の方ともエレベーターで一緒になったり、ビルの中でご挨拶を交わしたりするようになりました。
そんな中、品の良い年配の御婦人がいらっしゃいました。この御婦人はビルに住んでいらっしゃいました。

ビルの中で会うと、足をとめて、いつもおだやかに微笑んでご挨拶してくださいました。
私が勤めていた会社の電気が夜中まで点いていることにも気づかれて、「夜遅くまで大変なお仕事ですね。お体気をつけてくださいね」などとお気遣いいただくことも。
バタバタと余裕無く仕事に追われていた中、私も年齢を重ねたら、こんな風にご挨拶できるような人になりたいと思いました。

ある時、束の間の立ち話をしてる中で、御婦人の子供時代の事件をお話してくれました。
戦時下のこと。
「銀座の角に爆弾が落ちて、大きな穴があいたのよ」
今の街からは想像できないだろうけど、という話で。
銀座でもそんなことがあったことを知らず、驚くとともに、歴史の中を生きてこられた方なのだと感じました。
もっといろんなお話を聞いてみたいと思いながら、仕事の合間でもあり、その後、思い出話を聞くことはありませんでした。

見出し写真は、正面入口のガラス扉を内側から見たところ。

今日書くのはここまで。ではまた。


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