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銀座Tビルの記憶 5 [地下 その1]

ビルには地下倉庫がありました。
地下倉庫に入る時は、ビルの裏側1階から。シャッターが降りている時は、まずシャッターを上げます。

シャッターを上げて入ると少し先に下りの階段があり、降りていくと木製の扉が現れます。この扉の鍵がまた、時代感があって印象的でした。
まるで絵本に出てくる宝箱の鍵のような形(真鍮のような色で、シンプルな形。棒の部分が長い)をしていたのです。くすみ、丸みを帯びたその姿から、使われてきた年数の長さを感じました。

鍵を開けたら、扉横にあるレバー式の電気スイッチを上げます。ゆっくりと電気が点くのを扉の隙間から確認し、中へ入ります。
入ると冷んやりとし、夏場は涼しい場所でした。
コンクリートっぽい壁面の上部などが黒くなっていましたが、それは戦時中の戦火の跡だという話でした。この地下にまで戦火が届きながらも、ビルが建ち続けているとは、聞いた時は信じがたい思いでしたが。

入ってすぐのスペースは、出版社さんが使用していて、通路脇にも書籍が大量に積まれていました。
通路を進むと、鉄製らしい扉があり、また別の鍵(こちらは普通の現代的な形状)を使って開けます。
中は広いスペースで天井が高く、壁沿いに木材で大きく組まれた棚がありました。その区画を分けて、希望するテナントがそれぞれ借りていました。

私がいた会社でも仕事柄、制作物の見本誌やポスターなどのストック、資料類が多かったこともあり、1区画を借りていました。
資料を片付けるために倉庫へ入ると、外の音も聞こえず、静かで、ここに閉じ込められたら怖いな、という雰囲気がありました。

見出し写真は、地下倉庫への階段を降りてすぐの壁面。

今日書くのはここまで。ではまた。

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