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[AI21 Labs]マネタイズに成功してる生成AIスタートアップをまとめてみた①

はじめに


どうも、サイバーエージェント・キャピタル(CAC)でキャピタリストしている永堀(ナガホリ)です。
今回は、海外で生成AI系でマネタイズに成功している企業を調査したので、そちらをシェアできたらと思ってます。

自分は元々データサイエンスをしていたのですが、今回は技術的なことよりもビジネス的なことをまとめています。
具体的には、「誰の?」、「どんな課題を?」、「どんなデータを学習して?」、「効率化しているのか?自動化しているのか?高品質化しているのか?」、「どのくらいのお金になっているのか?」ということを中心にお話しできればと思います。

ちなみにキャピタリストとして、ご相談や壁打ちはいつでも受け付けているので、下記より予定調整しちゃってください!!

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では早速、行きましょう。


AI21 Labs(イスラエル)とは?

Wordtuneという、ドキュメンテーションAI
AI21 Studioという、大規模言語モデルJurassic-1を用いた開発者向けのAI開発プラットフォームを提供する、AI系スタートアップです。
AI21 Studioに関しては、30,000を超える開発者が登録しています。
2022年の売上は$22M*1
2023年の売上は$50M*2
と言われており、現在の企業価値は$1.4B*3 です。

Wordtuneとはどんなサービスなのか?

Wordtuneは、ドキュメンテーションに特化した生成AIです。後述する学習データの違いの他に、UIとしてドキュメンテーションに最適化されています。例えば、Chat GPT上で文章を修正しようとすると
「文章を修正してください」というプロンプトを打つ必要がありますが、Wordtune上ではプロンプトを打つ必要はなく、修正パターンも複数ある中で選ぶ形式になっています。

https://www.wordtune.com/

今回は、日本語なので、よくわからない応答が返ってきてしまいましたが、ドキュメンテーションという文脈において、UI/UXの観点からChatGPTやClaude3よりも快適になっていることがわかります。

また、Wordtune spicesという機能があり、常に出典を明らかにした引用や統計情報を提案してくれます。めっちゃ便利ですね。

AI21 Studioはどんなサービスなのか?

Wordtuneがライターのために最適化されたAIであるならば、AI21 Studioは開発者のために最適化されたAIになります。
こんなプロダクトが欲しいと、プロンプトを打つと、その開発手順をコード、利用ツールを含めて提案してくれるものになります。

https://studio.ai21.com/

こちら、Wordtune同様に「コードを書いて」など、汎用的な生成AIにおいて必要なプロンプトが省かれています。

また、新たにドキュメントをRAGエンジンに加えることで、独自のナレッジベースにすることも可能になります。

https://studio.ai21.com/

痒いところまで手の届いた開発プラットフォームとなっていることがわかると思います。

売上80億を稼ぐビジネスモデルは?

Wordtuneに関しては、サブスクリプションでエンドユーザからの課金をとっています。

https://www.wordtune.com/

無料プランでは10回分の文書修正しかできないので、利用者のほとんどは課金をすることになると思われます。

AI21 Studioに関しては、具体的な料金プランがわからなかったのですが、おそらく利用量に応じた課金システムで、AWSのような、使えば使うだけ利用料がかかるものだと思われます。

https://studio.ai21.com/

なんで稼げるの?

今回のサービスにおける、ユーザの課題は非常に明確ですね。Wordtuneであれば、ライターの執筆業務、AI21 Studioであれば、開発業務そのものが課題と設定されています。
ですが、課題はあるが、それが「お金になる課題なのか?」というのは別の論点です。

「お金になる課題なのかどうか?」は「PLヒットするのかどうか?」が基準となります。これは、「マクロなPLにヒットするのか」、「ミクロなPLにヒットするのか」という2つの側面があります。
「マクロなPLにヒットするのか」について、詳しく述べると、例えば、トップラインを伸ばす営業SaaSとかがわかりやすいですね。企業全体のトップラインにわかりやすくインパクトがあるので、営業部や経営陣としても予算を確保しやすい。また、DXといった業務効率化も人件費を下げることができるので、これもわかりやすくPLヒットしますね。
逆にマクロなPLにヒットしていない事例で言うと、あまり頻度も無ければ、そこまで時間もかからないものをDXしようとするといったものです。ユーザインタビューをすると、ミクロで見たらめんどくさい作業なので、DXのニーズがあるように思えるのですが、マクロでのインパクトがほとんどないため、予算が全く取れない。「お金にならない課題」を解決してしまっているということになります。

対して、ミクロのPLにヒットするのか?とは、従業員のサラリーに直結するか?という論点です。例えば、リスキリングなどの文脈でうまくいっているスタートアップはどこか、という問いを考えると、プログリッドやGlobeeが挙げられるのではないでしょうか?英語というものは、単純にわかりやすく従業員の年収を上げてくれるものです。だからそこに個人からお金が支払われる(プログリッドは法人営業にも力を入れていますが)
対して、コテンラジオといった例外はありますが、例えば、歴史のリスキリング事業を行ったとしても、個人からお金をもらうハードルは英語よりも高くなることは想像に難くないでしょう。歴史に詳しくなっても残念ながら労働市場ではあまり評価がされないからです。

まとめると、誰の財布からお金をいただくのか?を考えることが、そのサービスがマネタイズできるかどうかに直結するという当たり前のことを言っております。

今一度、AI21 Labsの話に戻ります。まずWordtuneですが、ライターは良い記事を書くことが、現場での評価や自身が運営するメディアの数値に直結します。なのでミクロなレベルでPLインパクトをする領域なのがわかります。また、AI21 Studioに関しても、経営陣の立場に立った時、エンジニアを1人雇い、給料が50万として、年間600万円以上の人件費がかかります。これを減らせるのであれば、そのまま原価にヒットするので、粗利率が改善し、PLにインパクトがあります。

ライターや開発者のPLヒットをどのように実現しているのか?

Wordtuneであれば、ライターが「評価されたな」、「数値が出たな」と思うような文章を、Wordtuneを通して書けないといけません。同様にAI21 Studioにおいても、「エンジニアがいなくてもその分の実装を問題なく終えることができた」となる必要があります。

そのために何をしているのか?これは公開情報がなかったので、あくまで予想になりますが、以下のことをしていると思います。

①学習データをライティングとエンジニアリングに重きを置いたものにしている。
例えば、GPT-4のパラメータ数は公表されていませんが、GPT-3の1750億です。対して、Jurassic-1は1780億個と、ほぼGPT-3とパラメータだけを見ると同程度になります。ですが、ライティングの質や開発の実装であればGPT-4に引けを取らないということを考えると、学習パラメータのセグメントを絞って効率的に学習をしていると考えられます。
②ファインチューニングでUI/UXを向上させる
ファインチューニングとは、事前学習済みの言語モデルを特定のタスクや領域に適用させるプロセスのことを指します。これにより前述のUI/UXの最適化につながり、詳細なプロンプトや説明が不要になります。ユーザーは、技術的な要件や仕様を簡潔に伝えるだけで、モデルが適切なコードを生成してくれます。
③アクセサビリティを広げる
これはAI21 Studioに限っての話ですが、GPT-4のAPI利用については審査や利用制限などがある一方で、Jurassic-1については開発者が自由に利用し、自身のアプリケーションに統合することできます。エンジニアの効率化だけでなく、AIサービスの開発という付加価値も提供しています。

汎用的なAIではなく、ユーザ・ターゲットを絞り、業務の課題を解決することに集中することで、AI21 Labsは売上を作っていると言えるでしょう。

日本での応用は可能なのか?

Wordtuneに関しては、わかりやすく日本語対応ができていないので、この分野においては、国内のスタートアップにチャンスな状況になっていると思います。また、今後の日本語対応の可能性ですが、以下3つの理由で対応は難しいと思っています。
①訓練データの不足: Wordtuneが使用しているJurassic-1言語モデルは、主に英語のデータを使用して訓練されています。大規模で高品質な日本語データセットを収集し、モデルを訓練することは、時間とリソースを要する作業になります。
②日本語の言語的複雑さ: 日本語は、英語とは異なる文法構造、語順、助詞の使用など、言語的に複雑な特徴を持っています。これらの特徴を適切に処理するためには、言語モデルに特化した調整が必要です。
③文化的ニュアンスの捉え方: 日本語には、敬語や謙譲語など、社会的・文化的な文脈に基づいた表現が多く存在します。これらのニュアンスを適切に理解し、生成するためには、言語モデルが日本語の文化的背景を学習する必要があります。

日本における市場に魅力を感じるのであれば、本腰を入れるかもしれませんが、地理的にイスラエルのスタートアップということもあり、先にヨーロッパ向けに力を入れるのではないのかなと思います。

AI21 Studioに関しては、コーディング自体が英語のようなグローバル言語で行われているため、比較的に日本でも受け入れやすいのかなと思っています。

最後に伝えたいこと

まとめると、日本におけるWordtuneなるサービスが絶対今後出てきます!!私はそれを確信しています。ライターをはじめドキュメンテーションに関わる全ての日本のクリエイター、ワーカーをAIの力で押し上げる、そんなスタートアップの登場を待ち侘びずにはいられません。

書きながら自分がワクワクしてきました。なので、第二弾も作っていきたいと考えています。よろしければ、拡散・いいねにご協力ください!

冒頭にも述べましたが、海外AIについて話したいとか、壁打ちがしたいとかあれば、いつでも壁打ち募集しています。

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ではまた次回のnoteで!

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