生田紗代『オアシス』

とても好きで何年かに一回読み返してる本。
チラ見せだけで何も語らず、劇的な事件も起こらず、ちょっと毒のあるコミカルな日常が続くのがよい。
失くした自転車はおそらく戻らない過去の象徴で、だからメー子さんはこんなにも躍起になってるんだろうな。綾子とは親友だったのかな。
見知らぬ二人の女の子と一人でトボトボ帰ってる女の子の描写は、メー子さんがそれぞれに自分と綾子のこと重ねたんだろうなと思った。とわ子もかごめ亡くなった後その辺を談笑しながら歩く女の子二人に自分とかごめを重ねるシーンがあったよなあ。こういう描写切なくて好きだなと思った。
メー子さんと綾子に何があったのかわからないけど読者は推測で色々考えることができて、その辺りは和美叔父さんの離婚の原因を邪推する姉妹のくだりと同じような感じになるのかなと思った。みんなそれぞれ色々あって、実際のところは本人にしかわからない。

でも過ぎてしまった時間はもう戻らないから、どんなに惜しくても気に入らないメタリックブルーの自転車に跨って前に進むしかないんだよなあ。取り戻すって次にいけるってことだってQ10で言ってた。
あの新しい自転車は容赦のない時間の流れそのものだと思ってる。無理やり乗せられて渋々の前進なのに、その物理的な移動に投げやりでもなんでも晴れ晴れしさを感じるから読むたびに良いラストだな〜と思う。

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